サンパウロはレンタル延長を望んだが、コリンチャンスは完全移籍しか認めず、今年初めにコリンチャンスへ一旦帰還。しかし、ライバルクラブで活躍した男を歓迎する空気は一切なく、コリンチャンスと本人の双方が移籍を強く望んだ。
 
　今冬はバルセロナ、チェルシー、トッテナム、リバプール、ベンフィカ、スポルティング、中国の天津権健など多くのクラブからオファーが届き、このうち天津権健が移籍金2000万ユーロ（約28億円）、年俸1300万ユーロ（約18億円）という最高条件を提示。コリンチャンスはこのオファーに乗り気だったが、欧州再上陸を望む本人が固辞した。

　結局は１月26日、CFの控えであるラダメル・ファルカオやロイク・レミが不調で、ジエゴ・コスタに並ぶ得点源を欲しがっていたチェルシーへ、今シーズン限りの期限付き移籍（買い取りオプション付き）が決定。本人はプレミアリーグ行きに満足しており、モチベーションは高い。

【2016年欧州冬のメルカート】新天地を求めた主な選手
 
　新天地にはウィリアン、オスカール、D・コスタ、ケネディなどブラジル出身の選手が多い。シーズン途中の加入ではあるが、チームに溶け込むのはさほど難しくないだろう。
 
　近年は故障癖を克服し、身体のキレも戻ってきた。テクニック、スピード、サッカーセンスと全てがハイクオリティーで、フィジカルコンタクトのひ弱さも消えた。前線ならどこでも機能するポリバレントさも強みだ。プレミアリーグのインテンシティーの高さと攻守の切り替えの速さに適応できるかどうか、注目が集まる。
 
　２月12日現在でまだ新天地デビューを飾れていないが、不振を極めるファルカオに代わってチャンピオンズ・リーグにも登録されており、コンディションが整い次第、出場機会を得られるだろう。
 
　能力に疑いの余地は一切ない。３年ぶりに帰ってきた世界トップレベルの舞台で、約２年半遠ざかっているセレソンにも返り咲く最後のチャンスであることを自覚し、ひたむきにプレーすれば、“元天才少年”が復活する可能性は十分にある。期待したい。
 
文：沢田啓明