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なぜ、風呂桶だったのか。フロンターレを支えてくれた全ての人の象徴。生み出し続けていきたい、「温かさ」という価値を

カテゴリ:Jリーグ

手嶋真彦

2022年11月19日

準備していたポスターは毎回お蔵入りに

『寿恵弘湯』を営む星野さん。川崎との出会いは98年。天野が弱音を漏らした、あの夜も励ました。写真提供:星野義孝

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 川崎フロンターレが初めて公式戦で優勝したのは、2000年から数えて17年後の2017年12月2日。川崎大師の近くで『寿恵弘湯』という銭湯を営む星野義孝はその日、J1制覇という初タイトル獲得の瞬間を、銭湯の2階にある自宅で迎えていた。

 中村憲剛が等々力陸上競技場のピッチ上にうずくまり、突っ伏して泣いている。Gゾーン(ゴール裏応援スタンド)の多くのサポーターも嬉し涙を流している。TV中継を見ていた星野も、胸が一杯になっていた。

 フロンターレとの出会いは、そこから遡ること19年前の1998年。川崎大師周辺の商店街の仲間と、選手や監督たちを招き、ささやかな激励会を催したのが最初だった。

 2000年にJ2降格が決まった夜は、近所のスナックで天野を励ました。天野が飲めない酒を飲み、弱音を漏らしたあの夜だ。

 星野とフロンターレの関係はその後も続く。2010年に銭湯利用促進企画の「いっしょにおフロんた~れ」が始まる時は、天野と一緒にああでもない、こうでもないと企画のネーミングを考えた。「テルマエ・ロマエ」や「オフロスキー」とのコラボレーションにも、川崎浴場組合連合会を代表する立場で関わった。フロンターレへの愛着は年々増していく。

 フロンターレの観客動員数も年々増加し、2001年の平均3784人が、J1再昇格の2005年は1万3658人となり、2015年には2万999人と初めて2万人の大台を突破する。

 しかし、タイトル獲得は叶わずにいた。2006年以降はJ1で2位が3回、天皇杯とリーグカップでも準優勝合わせて4回。星野はそのたびに、商店街の仲間たちと祝勝ポスターを準備した。
 
 結局、準備していたポスターは毎回お蔵入りとなる。それでも、もう応援をやめようと言い出す仲間はひとりもいなかった。

 星野が驚きで目を疑ったのは、銭湯の2階にある自宅でTVの画面越しにフロンターレの表彰式を見ていた時だ。J1を制したチームは、優勝皿のシャーレを天に掲げる。しかし、その日の等々力にはシャーレがなかった。別の会場で別の試合に臨むチームが単独首位で、その日の最終節を迎えていたからだ。

 シャーレの代わりに天に掲げたのが風呂桶だった。中村憲剛が掲げ、監督の鬼木達も天に掲げた。

 なぜ、風呂桶だったのか。

 おそらく象徴なのだろう。クラブの最も苦しい時代を支えてくれた川崎大師の商店街の仲間たち。そのひとりが銭湯を営む星野であり、星野の商売道具が風呂桶だ。

 フロンターレを支える人は年々増えていく。支えてくれた全てのサポーター、支えてくれた全てのスポンサー、支えてくれた全てのボランティア、支えてくれた全ての人を象徴していたのが、あの風呂桶だったに違いない。

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