本物の指導者は「人間関係を育みながら、一緒に成長していける人」
ひょっとすると……と、吉村は言う。「ひょっとすると日本の指導者に足らないのが、向上心や探求心かもしれません」。JFA(日本サッカー協会)のインストラクターとして指導者養成にも携わってきた吉村は、こう続ける。「もっと学ぼう、もっと探求しようという精神や魂を持った指導者が、現場にもっと増えてもいいような気がしています」。
順天堂大学で「コーチ学」と「トレーニング科学」を研究している吉村には、少し違った観点からの危惧もある。エビデンスの裏付けがある科学的な知見を、サッカー指導の現場に活かそうとする動きの乏しさだ。
「その意味でも是非、多くの指導者に来場していただければ」
そう呼びかけるのが、年末の12月23~24日に順天堂大学さくらキャンパス(千葉県印西市)で開催される「第16回日本フットボール学会」だ。今回は吉村が会頭を務める。
「指導者の経験値はもちろんとっても大事だと思います。同時に科学的な知見を活かして指導の幅を広げてほしい。そんな願いも持っています」
「日本フットボール学会 16th Congress」と打ち込めば、ホームページを検索できる。森保一日本代表監督が登場するオープニングセッションから、「傷害予防とコンディショニング」についてのシンポジウム、又吉直樹さんを特別ゲストに迎える大討論会、アンプティサッカーをはじめとする様々なスポーツの体験会など、2日間のプログラムは盛りだくさんだ。大人から子どもまで一般の来場者も「大歓迎です。学会員以外は参加無料ですので」。
順天堂大学で「コーチ学」と「トレーニング科学」を研究している吉村には、少し違った観点からの危惧もある。エビデンスの裏付けがある科学的な知見を、サッカー指導の現場に活かそうとする動きの乏しさだ。
「その意味でも是非、多くの指導者に来場していただければ」
そう呼びかけるのが、年末の12月23~24日に順天堂大学さくらキャンパス(千葉県印西市)で開催される「第16回日本フットボール学会」だ。今回は吉村が会頭を務める。
「指導者の経験値はもちろんとっても大事だと思います。同時に科学的な知見を活かして指導の幅を広げてほしい。そんな願いも持っています」
「日本フットボール学会 16th Congress」と打ち込めば、ホームページを検索できる。森保一日本代表監督が登場するオープニングセッションから、「傷害予防とコンディショニング」についてのシンポジウム、又吉直樹さんを特別ゲストに迎える大討論会、アンプティサッカーをはじめとする様々なスポーツの体験会など、2日間のプログラムは盛りだくさんだ。大人から子どもまで一般の来場者も「大歓迎です。学会員以外は参加無料ですので」。
“フットボール学会”ゆえに、ラグビーやアメリカンフットボールの第一線で活躍する指導者や各種スタッフの登壇も多い。17年度から順天堂大学の全ての運動部を統括する「スポーツ・アドミニストレーター」を務めている吉村は、サッカー以外の大学スポーツを観戦する機会が増えている。とりわけ感銘を受けたのが、東京大学アメリカンフットボール部のヘッドコーチを務め、年末の日本フットボール学会では基調講演の演者を務める森清之の試合中の姿にだ。
「森さんは戦況をじっと見守りながら、“次のこと”を考えているのでしょうね」
吉村が対比するのは“目の前のプレー”に反応し、いわば答え合わせを繰り返すだけの指導者だ。自分の正答に照らすだけなので、「違う! 何やってんだ!」といった声しか出てこない。
「森さんの姿を見ていると全然違うなと思います。サッカーの指導者がアメフトから学べること、めちゃくちゃあるんじゃないかと思いました」
正解を教える人が指導者なのか。いや、違うだろう。吉村の言葉を借りれば「人間関係を育みながら、一緒に成長していける人」こそ本物の指導者ではないだろうか。
◆ ◆ ◆
吉村と話をしていると、どこか包み込まれているような感覚にも陥る。筆者の勝手な感慨にすぎないが、やはりこの言葉が浮かんでくる。包容力だ。
「よく、吉村さんのサッカーってどんなサッカーですかって聞かれますけど、まったくないです。とにかく、チームが変化していく。そのための環境をつくるのが指導者の大きな役割だと思っていますから。人が成長していくには、変化がとっても大事です」
変化を恐れない。それどころか歓迎する。ひょっとすると……と筆者は思う。取材中、そこはかとなく幸福な時間が流れていたのは、誰でもウェルカムといった吉村のオープンマインドに、そっと包み込まれていたからかもしれないと。(文中敬称略)
取材・文●手嶋真彦(スポーツライター)