「指導者が伸びなければ、選手は伸びない」日本フットボール学会の会頭が考える育成現場の理想形

カテゴリ:連載・コラム

手嶋真彦

2018年12月20日

重要な任務はディスカッション。練習が始まる前に個別に徹底的に話し込む

スポーツクラブの高齢者との会は、こうした交流にも発展した。笑顔が溢れる、なんとも微笑ましい光景だ

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 生活の欠かせない一部になっているものを、文化と呼ぶのだろう。
 
「小口のスポンサーもたくさんついていて、勝つ、勝たないなんて関係なく、支え続けます。試合に負ければサポーターも文句は言います。でも、とっても温かい。勝てばワイワイ喜びます。そうやってスポーツが地域の人々を繋げているわけです」
 
 NPO法人を立ち上げてから間もなく、近隣(八街市)の高齢者たちと一緒に運動する会もできた。順天堂大学の男女サッカー部員が毎週水曜日の午後、八街市の公民館を訪れる。やがて食事会を開くような交流にも発展し、学生たちは卵焼きや唐揚げの作り方を教わりもした。すっかり打ち解けたおじいちゃん、おばあちゃんたちが、大学のグラウンドで開催される試合に駆け付けるようにもなった。応援にも熱が入る。

「気持ちの入らないプレーなんて、それはできないですよ」
 
 吉村が順天堂大学男子サッカー部の監督を退任した14年以降も、クラブレーヴェンの子どもたちとの活動は続いている。現在は吉村の研究室に所属する男子大学院生が中心となり、女子サッカー部員も参加する。吉村はほんの時折、ちらっと様子を覗くだけだ。任せているのは、設立当初からの趣旨がしっかり息づいているからでもあるだろう。オランダでこんなクラブを作りたいと吉村が願った、地域に根差し、地域に貢献できる、そして地域の人々から愛される、オープンなスポーツクラブだ。
 

 オランダ留学時代の吉村にその後の変化を促す助言をくれたのが、すでに何度か言及している、当時はアヤックスの育成ダイレクターだったコ・アドリアーンセだ。彼自身、終身雇用とも言われたアヤックスを飛び出し、ポルトガルではFCポルトを国内リーグ制覇に導くなど、その名は世界的に知られている。
 
 吉村の記憶に強く残っているのが、指導者の重要性を説くコ・アドリアーンセの話だ。その頃のアヤックスは自前で育てた生え抜きの選手を中心とするチームで、欧州チャンピオンズ・リーグを制している(94-95シーズン)。栄光を陰で支えた育成ダイクレターに、こう言われた。
 
「指導者が伸びなければ、選手は絶対伸びない。アヤックスが強いのは指導者が素晴らしいからだ。日々努力するし、日々探求している」
 
 コ・アドリアーンセの仕事ぶりがどれだけ魅力的だったか。アヤックスの育成現場の見学にそれこそ日参し、穴のあくほど観察していた吉村の話は尽きない。育成ダイレクターであるコ・アドリアーンセの重要な任務はディスカッションだった。その日の練習が始まる前に、高校生、中学生、小学生という各年代の指導者たちと個別に徹底的に話し込む。
 
「各年代の指導者たちは、それぞれ当日のチーム状態を報告しながら、コ・アドリアーンセさんとのディスカッションを通してトレーニング内容を吟味し、必要ならば変えていきます。あらゆるカテゴリーのあらゆる指導者が、自分のレベルを少しでも上げていこうと、それは真摯に取り組んでいたものです」

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