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「指導者が伸びなければ、選手は伸びない」日本フットボール学会の会頭が考える育成現場の理想形

カテゴリ:連載・コラム

手嶋真彦

2018年12月20日

2000年に順天堂大学の教員となった吉村は、補完を前提とする組織作りに取り掛かった

17年夏のクラブレーヴェンの活動。米国名門女子大のサッカー部員たちも参加した

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 少し噛み砕こう。そもそもの前提として「サッカーはミスのスポーツ」という認識が、オランダでは当時(吉村の留学は1996~97年)から一般的だったのだろう。問題はそこから考えをどう発展させるかだ。
 
 アヤックスの育成ダイレクターはこう考えた。サッカーはミスのスポーツだ。それでも創造性を発揮しながら、ゴールを奪う可能性は追求していかなければならない。しかし、ミスが付き物のスポーツなので、全てがうまくいくはずはない。だからピッチ上の選手たちは、サポートし合わなければならない。
 
 吉村はその先をこう考えたのだろう。誰かのミスを補えるのは、システムでもボールでもなく人間だ。だからサッカーは、人間関係が重要なスポーツなのか……。
 
 目から鱗が落ちた。アヤックスの育成ダイレクターの話は、サッカー選手の育成やチーム強化のための思想に留まらない。サッカーを介した学生教育そのものにも当てはまるのではないか。やがてサッカー指導者としての吉村と、学生教育の担い手である吉村は、ある意味で完全に重なり合う。
 
 競争原理で選手同士を競わせ、サバイバルによって強いチームを作るというやり方は、おそらくどこにでもあるだろう。一方、補完の考え方を前提とすれば、指導の考え方も教育の考え方もがらりと変わる。補完によって組織力を高めていくには、選手同士の協力が不可欠だ。一人ひとりが思いを巡らせ、工夫を凝らしていかなければならない。対話を重ね、改善を図る必要もある。結果的に強いチームができれば、それはそれで喜ばしい。しかし、仮にサッカーで結果を残せなくても、大切なものが残る。選手たちの人間的な成長だ。人と人は補い合える。その実感や手応えは、むしろ社会に出てからさらに価値が出てくるに違いない。

 1997年夏の帰国後しばらくして、吉村は母校の順天堂大学から誘われる。当時勤めていた大学への恩義などから、進退の結論はなかなか出せなかった。それでも引き受けたのは、やりがいが大きかったからだろう。こう口説かれたのだ。サッカー部を強化しながら、人を育て、模範となる運動部を作ってほしい。注目度と発信力の高いサッカー部から、他のクラブや学生に良い影響を及ぼしてくれないか、と。
 
 2000年に順天堂大学の教員となった吉村は、補完を前提とする男子サッカー部の組織作りに取り掛かる。平坦な道ではなかった。基本的な考え方をしっかり伝えるための話だけで、3泊4日の合宿が終わってしまったこともある。入部希望の新入生とは、最初の夏を迎える頃まで対話を繰り返してきたと言う。
 
 サッカー部員を人として育てていく使命を果たしていくには、グラウンドの外で過ごす時間も大切だ。サッカークリニックなど、学外での活動にも積極的に取り組んだ。
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