「指導者が伸びなければ、選手は伸びない」日本フットボール学会の会頭が考える育成現場の理想形

カテゴリ:連載・コラム

手嶋真彦

2018年12月20日

クラブ名の「レーヴェン」は、オランダ語で「人生」や「生涯」「生活」を意味する

コ・アドリアーンセの言葉が、吉村氏に衝撃を与えたという。(C)Getty Images

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 手応えが大きかったのは、夏休みなどに小中学生のサッカーチームを招待する共同の合宿だった。大学生の中に小学生を混ぜて紅白戦をする。あらかじめ大学生には伝えておく。手を抜かず、一生懸命やってくれれば、それでいいよと。
 
「大学生が蹴る強いパスなので、小学生はミスをします。でも、そのミスを別の大学生がカバーしてくれるんです。必死にカバーしてくれた大学生の姿を見ているので、その子どもは次こそはと懸命になって頑張ります。そうやって頑張る子どもから通ったパスを、大学生はなんとか生かしたいと必死になるわけです」
 
 こうした気持ちのやり取りこそ、人を心の底のほうから奮い立たせ、ぎりぎりまで力を絞り出させる。そうした作用を吉村はこう表現する。
 
「人は人でしか育ちません」
 
 子どもたちにとって、大学生はロールモデルとなる。身近な憧れだ。
 
「まだ完全な大人ではない、大学生のお兄ちゃんっていうのが、ちょうどいいんです。サッカーという共通の話題もありますし」
 
 体格も人生経験も異なる大学生と子どもたちが作用し合い、それぞれの限界を押し広げるきっかけはグラウンドの外にもできる。共同合宿中は大学生がそれぞれの下宿先に小中学生を連れて帰り、寝食を共にする。吉村は何度も驚かされた。そのわずか数日で大学生たちが劇的に変化したからだ。小学生の気持ちも、目線を変えれば想像できる。巡り巡って大学生のサッカー部員たちは、通常の部活動でも補完し合うようになる。

 カリキュラムのない総合型地域スポーツクラブ「NPO法人レーヴェン」を立ち上げたのは、2008年だ。オランダ語で「人生」や「生涯」「生活」を意味するレーヴェンをクラブ名としたのは、吉村がオランダ留学中に家族4人で会員となった地域のサッカークラブ(スポーツクラブ)をモデルとしているからだろう。
 
 スポーツの「する」「観る」「支える」の支えるとは、具体的には「お金を落とす」という行為に他ならない。ちなみにお金を落とす代わりに、時間と労力を捧げるのがボランティアだ。いずれにしてもオランダのサッカークラブは、それぞれの地域で守られるべき対象となっていた。上から数えて何部リーグなのかも吉村には定かでない、家族で会員となったローカルクラブも同じだ。
 
「オランダ人はこう思っているわけです。自分がチケットを買わないと、入場料収入が減ってしまう。ひょっとしたら、このクラブを守れないかもしれない。守りたいという強い意識を持っているので、後半からの観戦でもチケットを買うわけです」
 
 お父さんが子どもの手を引き、ハーフタイムのスタジアムへと急ぐ姿は、20年以上が過ぎた今も吉村の脳裏に焼き付いている。
 
「観戦中の飲み物を安いからという理由で、別の場所で買ってくるサポーターなんていません。みんなでクラブにお金を落とし、家族のように大事なものを守っていくんです」
 

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