第2戦の相手タイ代表の至宝を直撃。国民が熱狂するスーパースターの素顔と本音とは?

カテゴリ:日本代表

佐々木裕介

2016年08月30日

独特の技の秘訣は「楽しむ気持ちを持って練習すること」。

日本戦の会場となるラジャマンガラスタジアム。写真は2次予選の台湾戦の様子だが、超満員で溢れている。日本戦はさらなる熱狂が予想される。(C) Getty Images

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ムアントン・Uのホーム・SCGスタジアムで練習する選手たち。現在タイ・プレミアリーグで首位を走る。写真:佐々木裕介

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――ティーラシン選手のプレーには、ブラジルの「ジンガ」(ポルトガル語で「揺れる」とか「フラフラ歩く」という意味の言葉)のような「しなやかでリズミカルな動き、ステップ」を思わせます。間合いの取り方だったり足の運び方であったり、そのスタイルには「タイ王国独自のジンガ」を持ち合わせていると感じるのですが、その「術」はどのようにして身に付けられたのでしょうか?
 
 あなたは褒め上手ですね(笑) どのようにと言われると非常に困るのですが、私は幼少期から今までずっとサッカーを楽しみながらやってきました。楽しむ気持ちを持って練習をすれば、自ずとそれが身体から表現されるのかも知れません。サッカーも人生も一緒だと思います。
 
――その言葉は深いです。考えさせられます(苦笑)。ティーラシン選手はプライベートで日本へいらっしゃったことはありますか?
 
 試合では何度か行ったことはありますが、プライベートではまだないんです。家族と一緒に旅行へ行ってみたい国のひとつです。
 
――8月20日の試合(パタヤ・ユナイテッド戦)が終わるとリーグ戦は一旦中断し、ドーハでの代表合宿へ向けて直ぐに出発されると聞きました。年齢的にも一番脂の乗った時期に迎えるロシアワールドカップ・アジア最終予選へ向けた抱負を聞かせてください。
 
 タイ王国女子代表は、2015年にカナダで行なわれた本大会に初出場をしているんです。妹もメンバーに選ばれました。タイサッカー界にとっても男子代表のワールドカップ出場は悲願であり、私たちは今、その挑戦権を手にしています。
 
 初戦(9月1日、リヤドで行なわれるサウジアラビア戦)まであと2週間。練習試合(8月25日にカタール代表と対戦、主軸を先発から外し0-3で敗れた)も組まれていますし、しっかりと調整してチーム一丸となって最終予選に臨みたいと思っています。
 
――最後に日本人としてあなたへ一言だけ忠告させてください。今日のインタビューが日本で発表された後、日本のファンやメディアは今まで以上にあなたに注目するはずです。試合以外のところでたくさんの「敵」から厳しいマークに付き纏われるかもしれませんよ。注意してくださいね。
 
 それは注意して生活しなければいけませんね(笑)。十分に気を付けます。また9月6日にスタジアムでお会い出来ることを楽しみにしています。ありがとうございました。
 
――◆――◆――
 
 約束の時間からかなり待たされたうえに「インタビューはどの位の時間ですか?」という入りをかまされた私は面食らい、正直先行きが不安で仕方がなかった。しかしインタビューを進めるにつれ、相手を気遣いながらしっかりとした言葉で自らの思いを表現する、また育ちの良ささえ感じさせる好青年に対し、私が持つ彼のイメージは変わっていった。
 
 インタビュー後にはスタジアムで行なわれていた非公開のチーム練習も見学させてもらったのだが、部屋を出て行ったはずの彼の姿はグラウンドには居なかった。前夜に行なわれたカップ戦の出場メンバーはリカバリー中心のメニューで、チームスタッフ曰く、「ムイは室内で入念なマッサージを受けている。いつものことだよ」と平然と話してくる。
 
 そして私の帰り際と時を同じくしてやっと出てきたかと思えば、屈託のない笑顔を振りまきながら颯爽と愛車のドイツ製高級車に乗り込み、家族の待つ自宅へと帰って行った。なるほど。私はムアントンタニーの地で、間違いなく彼は生まれながらのスーパースターなのだと、その纏っている空気感から確信したのだった。
 
 ムアントン・Uは中国神話に現われる伝説上の霊獣「麒麟」をチームマスコットにしているが、ムアントン・Uのファンは彼に敬意を表して「The God of kirin(麒麟の神)」と呼んでいるとも聞いた。9月6日、我らが日本代表と相まみえるラジャマンガラ競技場のピッチで、エースナンバーの10番を背負う「The God of Siam(シャムの神)」はどんな「ジンガ」で観衆を魅せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。
 
<プロフィール>
ティーラシン・デーンダー (Teerasil Dangda)
1988年6月6日生まれ、タイ王国バンコク都出身。サッカー選手であった父の影響を受け7歳でサッカーを始める。海外での武者修行を経て2015年にタイ・プレミアリーグへ復帰。2002年からは各年代別代表に選ばれ、07年に同国A代表に初選出。同年10月に行なわれた南アフリカ・ワールドカップ・アジア1次予選のマカオ戦で代表初ゴールを記録。押しも押されもせぬタイサッカー界のスーパースターである。
 
<取材協力>
SCG Muangthong United Football Club
http://www.mtutd.tv/
 
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