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【「2007年」の中村憲剛】日本代表、ACL、ナビスコ杯決勝――。激動の1年が、末っ子気質の青年を大人に成長させた

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2016年04月29日

すべての初体験は苦い思いとともにある。しかし、この1年が中村を成長させた。

 この時期の自分に声をかけるとしたら――。そう訊ねると、中村はしばらく考え込んでから、口を開いた。
 
「日本代表の自分に対しては『もっと積極的にやれ』ってことかな。やっぱり自分のキャリアに劣等感があったから、しゃしゃり出ないほうがいいのかなって。誰もそんなこと思ってないのに、勝手にそう思って、気を使っていたから」
 
 チームの中心は俊輔、川口能活、中澤佑二らワールドカップ経験者たち。一方、憲剛は年代別の日本代表にすら選ばれた実績がなく、J1でプレーするようになったのも05年からだった。
 
「上の人に付いて行くという感じだったけど、ボランチなんだから『こうしましょう』と言ってもよかった。アジアカップではそうした気後れがチームの足を引っ張ってしまったかもしれない」
 
 一方、クラブでの自分に投げかける言葉は、それとは逆だ。
 
「『もう少し肩の力を抜けよ』ってことかな。この年、初めてキャプテンマークを巻いたんですよ。だから、いつも先頭に立とうとしていたし、周りもそれを望んでいた。チームの勝敗すべてを背負い込んだ気になっていた。この写真なんて、まさにそう。もう少し周りを頼ってもよかったのかもしれない」
 
 視線の先には、準優勝のメダルを首から下げて、うな垂れる写真があった。
 
 日本代表でも、クラブでも、未知のことばかりだった。それゆえ余裕がなかったし、息つく暇もなかったが、だからこそ成長もできた――。中村にとって07年はそんなシーズンだった。
 
「振り返ればこの年、なにも成し遂げられていない。でも、だから今でも走り続けているのかもしれない。この年がキャリアの中でズシリと重いシーズンだったのは間違いないですね」
 
 すべての初体験は苦い思いとともにある。しかし、このシーズンが末っ子気質だった青年を大人のサッカー選手に成長させたのも、また確かだ。
 
取材・文:飯尾篤史(スポーツライター)
 
◆プロフィール◆
なかむら・けんご/ 1980年10月31日生まれ、東京都出身。175㌢・66㌔。府ロクS―小金井二中―久留米高―中央大―川崎。視野の広さと高いパスセンスを誇るJリーグを代表する司令塔。35歳にしてなお強烈な存在感を放っている。
 

激動だった2007年。中村はJリーグベストイレブンに選ばれている。(C)SOCCER DIGEST

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