「攻撃の選手にディフェンスをさせたいなんて、あらゆる点でフットボールを分かっていない」(フォルラン)
さらに佐藤、豊田のふたりが得点王レースの主役を演じ続ける間に、得点源もFWの役割も少しずつ変化してきた。リオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウド、さらにはアリエン・ロッベンらに象徴されるように、現代サッカーで最もゴールを積み上げているのは、最もゴールに近い位置でプレーをするトップではなく、サイドからゴールへと切れ込むアタッカーたちだ。
Jリーグでも第2ステージ・10節終了時点で、得点ランク首位の座を占めているのは宇佐美貴史である(※原稿執筆は9月24日以前)。むしろ1トップは、最前線の守備者としてハードワークをこなしながらボールを引き出し、周囲を上手く活用することも求められるようになっている。
ただしそのために日本の現場には、大きな誤解も生じている。特にまだなにも武器を持たない育成段階から「守備ができないと試合で使わないぞ」と脅しにかかる指導者が目に付く。まるで小噺のように皮肉な本末転倒ぶりだが、FWとして試合に出る条件が守備だと強調される現場は意外なほど多い。これではいくらチャンスの山を築いても決め切れない試合が増えるのも必然だ。
ディエゴ・フォルランは『フットボール批評』誌で、C大阪時代に大熊裕司監督から「我々には守備のできるストライカーが必要だから」とスタメンを外されたという。
「世界のどの監督も、そんなことは言わない。(中略)攻撃の選手にディフェンスをさせたいなんて、あらゆる点でフットボールを分かっていない」
今の日本では、良い試合をしたけれど決め切れなかったというコメントが急増中だ。だがプロが興行であり、観客がゴールを切望するなら、決め切れない試合を良かったと語るのは自己満足に過ぎない。
逆に佐藤や豊田が日本代表で重用されないのは不運だが、彼らはJリーグで紛れもなく対価を超える歓喜をもたらし続けた。その価値は日の丸を付けていなくても、まったく損なわれるものではない。
文:加部 究(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』10月8日号(9月24日発売)より抜粋
Jリーグでも第2ステージ・10節終了時点で、得点ランク首位の座を占めているのは宇佐美貴史である(※原稿執筆は9月24日以前)。むしろ1トップは、最前線の守備者としてハードワークをこなしながらボールを引き出し、周囲を上手く活用することも求められるようになっている。
ただしそのために日本の現場には、大きな誤解も生じている。特にまだなにも武器を持たない育成段階から「守備ができないと試合で使わないぞ」と脅しにかかる指導者が目に付く。まるで小噺のように皮肉な本末転倒ぶりだが、FWとして試合に出る条件が守備だと強調される現場は意外なほど多い。これではいくらチャンスの山を築いても決め切れない試合が増えるのも必然だ。
ディエゴ・フォルランは『フットボール批評』誌で、C大阪時代に大熊裕司監督から「我々には守備のできるストライカーが必要だから」とスタメンを外されたという。
「世界のどの監督も、そんなことは言わない。(中略)攻撃の選手にディフェンスをさせたいなんて、あらゆる点でフットボールを分かっていない」
今の日本では、良い試合をしたけれど決め切れなかったというコメントが急増中だ。だがプロが興行であり、観客がゴールを切望するなら、決め切れない試合を良かったと語るのは自己満足に過ぎない。
逆に佐藤や豊田が日本代表で重用されないのは不運だが、彼らはJリーグで紛れもなく対価を超える歓喜をもたらし続けた。その価値は日の丸を付けていなくても、まったく損なわれるものではない。
文:加部 究(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』10月8日号(9月24日発売)より抜粋