武藤嘉紀の人生を一変させたFC東京の監督交代劇。
才能だけでは決して成功は掴めない。過去の歴史を紐解けばそれは明らかだが、置かれた環境などにも左右されるサッカー界でトッププレーヤーになるためには、いかなる要素が必要なのか。中田英寿をはじめ、小野伸二、中村俊輔、本田圭佑らの足跡をヒントに、スポーツライターの加部究氏が大成するための条件を導き出す。
――◆――◆――
おそらく、フットボーラーの明暗を分ける最も大きな要素は運だ。理解ある監督との巡り合せと言いかえてもいい。
極論を承知で言えば、リオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドが、もし日本に生まれていたら少年時代をベンチで過ごしていた可能性もある。あるいはベンチに座らなくても、平凡なパサーに終わっていたかもしれない。
実際、今の日本に、小さなメッシがドリブルばかりしていたとして、守備の負担を軽減してまで、その長所を我慢強く伸ばそうと考える指導者が何割いるだろうか。
フットボーラーとしての成否は、かなり成長してからでも依然として不透明なものだ。C大阪にレヴィー・クルピ監督がやって来なければ、香川真司は控えのボランチという立場に耐えられず、今もJリーグのクラブを渡り歩いていたかもしれない。
武藤嘉紀の人生を一変させたのも、FC東京の監督交代劇だ。もしランコ・ポポヴィッチがあのままパスサッカーで成功していたら、ドリブルが持ち味の武藤は今頃出番を求めてレンタル移籍の道を模索していた可能性もある。だからFC東京を率いて今季で2年目のマッシモ・フィッカデンティ監督は胸を張る。
「私が来日した頃は、みんな柿谷曜一朗に注目していて、武藤のことなどほとんど誰も知らなかった」
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おそらく、フットボーラーの明暗を分ける最も大きな要素は運だ。理解ある監督との巡り合せと言いかえてもいい。
極論を承知で言えば、リオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドが、もし日本に生まれていたら少年時代をベンチで過ごしていた可能性もある。あるいはベンチに座らなくても、平凡なパサーに終わっていたかもしれない。
実際、今の日本に、小さなメッシがドリブルばかりしていたとして、守備の負担を軽減してまで、その長所を我慢強く伸ばそうと考える指導者が何割いるだろうか。
フットボーラーとしての成否は、かなり成長してからでも依然として不透明なものだ。C大阪にレヴィー・クルピ監督がやって来なければ、香川真司は控えのボランチという立場に耐えられず、今もJリーグのクラブを渡り歩いていたかもしれない。
武藤嘉紀の人生を一変させたのも、FC東京の監督交代劇だ。もしランコ・ポポヴィッチがあのままパスサッカーで成功していたら、ドリブルが持ち味の武藤は今頃出番を求めてレンタル移籍の道を模索していた可能性もある。だからFC東京を率いて今季で2年目のマッシモ・フィッカデンティ監督は胸を張る。
「私が来日した頃は、みんな柿谷曜一朗に注目していて、武藤のことなどほとんど誰も知らなかった」