東京五輪躍進のカギは状況把握と修正力。プロ分析官がスペイン戦を徹底解剖!

カテゴリ:日本代表

サッカーダイジェストWeb編集部

2021年07月19日

数的不利の局面をどう修正していくか

スペイン戦、前半のメンバーとマッチアップ図

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 スペイン戦では、敵陣の守備でフォワードとトップ下のプレス開始位置がセンターサークル付近まで下がってきて全然プレッシャーをかけにいかなかった。

 これを良しとしていたかどうかは、定かではないですが、そういった戦い方をしてみようというトライの部分もあったと思います。

 引いていたから駄目とか、もっと行った方が良いという話ではなく、スペイン代表のように、足下の技術がある選手たちが揃っている時に、むやみにプレスに行って、剥がされてピンチを招いてばかりでは話になりません。

 どこをスタート地点として、自分たちが追い込んでいくのか。これまでの試合ではあまり見られなかった、ほぼほぼ全員が自陣に引くようなイメージでスタートしていました。これを継続して行なうわけではないでしょうし、この試合でもずっとベタ引きでもなかった。ただ、その時に自陣での攻撃と同じように、相手の陣形と狙いがどこまで理解できていたかには注目です。

 相手はアンカーシステムを採用し、4バックで【図】のままピックアップしていた。久保選手が林選手と横並びになるような4-4-2の形で守っていたので、単純に相手アンカーと2CBに対して、2トップが対峙する2-3の数的不利な形になっていました。

 相手のアンカーがフリーになってしまうのを恐れて、センターバックにプレスに行かないという判断だったと思うのですが、中途半端になっていて、スピメンディ選手がフリーな状態で久保選手と林選手の後ろでボールを受けて出されてしまっていました。

 特に前半何度も見られた形で、見かねて板倉選手が前に出て奪ったというシーンもありました。板倉選手、遠藤選手のボランチふたりは、対応力、適応力、修正力があるので、対処できている部分もありましたが、彼ら単独で修正していくだけでは難しい。チーム全体として共有して、2トップを動かすとか、守備の形を変えるとか、ボランチを中心に指示を出して、味方を動かせるかというのがもっともっと必要です。
 

スペイン戦、後半のメンバーのマッチアップ図

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 さらに後半、遠藤選手が交代していなくなった55分くらいから、立て続けに真ん中にパスをつけられて、突破されてというのが4、5本続きました。

 守備時は自陣に移ってからも対応力、状況の把握というのはより切実なものになりますし、さらに中央突破を許さないための立ち位置も考えなければいけません。

 この修正力というのが、遠藤選手に頼りきりでは話にならない。サイドハーフをもう少し中に絞らせるのでも良いですし、2トップを縦関係にして対処するでも良かったですし、センターバックが前に出た方が良かったのかもしれません。そういった対処が後半のメンバーはまだまだ出来ていなかった。

 スペインの選手たちが真ん中のバイタルエリアに4、5人いるような形で、そこに簡単にパスを入れられました。失点もそこを修正できずにずるずると下がったなかで生まれています。

 相手監督が試合後に、気になった選手として冨安選手を挙げていました。日本の守備では、まさにその冨安選手と吉田麻也選手が、センターバックとボランチの間、いわゆるバイタルエリアに対して、下がらず前に出てアプローチする勇気を示しました。

 32分には冨安選手が相手のくさびに対して、前に出てインターセプトし、自分で持ち込んでカウンターを仕掛けたシーンも印象的です。

 センターバックが引いて守る、クロスに対してヘディングではね返すだけでなく、自分たちのウィークポイントを消すような、アプローチ、守備の仕方、は必須です。そのためには、勇気という言葉は少しチープですが、実際にプレーする選手としては前にでるのは怖いというのがセンターバックの心情でもあるので、それを恐れずにできる気持ちも重要です。これを本番でも恐れずに、相手のセンターフォワードを潰すような勢いで、能力を発揮してほしいなと思います。

 センターバックの吉田選手、冨安選手が出場していた前半は、中央突破を許さない姿勢が、ある程度出来ていましたが、後半は正直全然できずにかなり自由にボールを回されて、スペインに真ん中を使われ、ペドリ選手にはスルーパスをバンバン通されました。

 ここはスペインだからやられたのではなく、チームとしても本番を見据えた時の課題のひとつでしょう。
 
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