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【安永聡太郎】リーガ首位のR・ソシエダは何が凄いのか? 新戦力シルバがもたらした“劇的な効果”とは――

カテゴリ:連載・コラム

木之下潤

2020年11月21日

「僕らが使っていたアイコンタクトは死語になる」

ソシエダを昨シーズンに続いて躍進に導いているアルグアシル監督。(C) Getty Images

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 このチームの凄さはゴールを狙う最終局面でも、チームとして選択肢が共有されていること。

 ベティス戦の1点目をたとえに出したけど、サイドからの低いグラウンダーのクロスに対するパターンだけではない。たとえば、シルバのような逆足タイプが右サイドでカットインしたら、まず左サイドにいる選手は相手SBの背後を狙う。その象徴的なシーンがセットプレーの流れではあるけど、ウエスカ戦の1点目のPK獲得シーンだった。

 シュートシーンを作る部分にも背後と内側というように、ある程度は選択肢を作っている点にソシエダのチームとしてのオーガナイズのすばらしさを感じる。

 よくアイコンタクトと言って「試合中のコミュニケーション領域」に触れている人がいるけど、今はアイコンタクトもタイミングを合わせるツールであって、そこで「意思の疎通をはかろう」とするとスピードが遅くなるから、トップレベルの選手たちはそういう使い方をしてはいないと思う。

 現代サッカーの局面は狭いスペースしかなく、選手のフィジカル能力が向上するなかで、「アイコンタクトで意思の疎通」をはかっていたら相手に対応されてしまう。極端な話、“プレー時に見たらダメ”な領域になってきている。見る作業は事前段階で終えていて、プレー段階では選択肢が絞りこまれている状態を自分で作れない選手はトップレベルでのプレーは難しい。
 
 守備ラインの背後をとるのも「どのタイミングでとるのか」を予測しておいて、動き出したら味方同士でオートマティックに連動し合うプレーが実践できないと遅い。そのタイミングでは「見ないでもできる領域にならない」とトップレベルのチームを相手に主導権なんて握れない。ここはチームとして突き詰める必要がある。

 これからは、「僕らが使っていた頃の意味でのアイコンタクトが死語になる」と思う。もちろん全否定するつもりは全くなく、ロングレンジでのプレーには必要だし、そこは間とか呼吸とかを合わせて通じ合うために「アイコンタクト」が重要になる。僕が言いたいのは昔オフトさんが伝えてくれた頃の意味合いとは変化しているということ。

 今は「間接視野で見ておけよ」の時代!

 短い時間で全部は見られないから、見ておく場所がチームとして明確になっているなら、それくらいは確認できる。そのカテゴリー、年齢によって多少の違いはあるが、クラブの監督はそのレベルで戦術を落とし込んでいかないと、きっとどんどん勝てなくなる。

 間接視野で仲間を押さえといて、しっかりと動き出すタイミングを推し量ることができて、そして直前で状況に変化があったら「止めた」と切り替えられる選手が徐々に求められるようになってきている。ソシエダを見ているとそういうチームづくりがされていて、そういう選手を育成してそろえている。

今シーズンのリーガは今のところ、順位としてマドリーやバルサの上に他のチームがいる展開だから。-リーガファンからすると最高だよね。ソシエダ、ビジャレアル、アトレティコ・マドリー、グラナダのやっているフットボールがおもしろいし、いい感じのシーズンになっているから、今後もこの4チームを中心に楽しみに追っていきたい。

分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤

【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすなが・そうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。スペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在はサッカー解説者として様々なメディアで活躍中。
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