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【安永聡太郎】マドリーのクラシコ快勝をもたらした異次元の「補完性」。それでも連覇は難しいと考える理由

カテゴリ:連載・コラム

木之下潤

2020年10月28日

こんなチームに久保建英は必要なのか?

クラシコでは守備戦術が際立ったジダン(左)だが、露呈した課題も少なくない。(C) Getty Images

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 マドリーの選手は各々が得意とするプレーを持っていて、それを深く紐解けばサッカーの教科書のようなプレーなんだけど、全世界の選手が共通して表現できるプレーの教科書ではない。基本には違いないんだけど、彼らが披露するプレーは「そこからどれだけ自分なりに書き換えを行ったんですか?」というほど原型をとどめていない。

「そんなチームに久保建英選手はいるのか?」ってね(苦笑)。

 そんなことをあらためて感じながら、今回のクラシコはテレビ解説をしていた。あんな守備をするチームでは、セオリーだけの守備対応するようじゃついていけないし、欠点にしかならない。試合を通じて感じたのは、「ジダンはやっぱり守備ありき」の監督! 攻撃は調子のいい選手が何を生むかという印象しかない。そこはハッキリした。

 現役時代、選手としてマドリーやフランス代表でどれだけマケレレのサポートを受けていたのかはジダンが一番実感しているところ。だから、補完性の生み方に長けているのかもしれない。

 問題点を挙げるとすると、今回のクラシコやチャンピオンズ・リーグ(CL)のような対戦チームのレベルが高く、マドリーの選手たちの心に火が付くようなチームの場合はいいけど、相手が格下になって「自分たちが受け身になってスタートする守備のハメ込みがいらない」となった場合に、攻撃の再現性の低さが浮き彫りになる。

 ここはジダンが「格下の場合は守備のハメ込みを作らないのか」「ある程度のシチュエーションはこうしようという戦術なのか」「もう全く指示を与えていないのか」はわからないけど、いずれにしろ選手たちのモチベーションが乗らないと、必死に守備の部分であれだけの仕事をしようという風にならない。

 そういうケースだと、マドリーは欠点だらけになる。なぜなら今のチーム力は攻撃が圧倒的ではないから。
 
 去年は自粛明けの連戦というコンペティションの背景があって、ジダンが「守備からの攻撃」を上手に構築して最少失点で優勝した。

 だけど、今シーズンはハードなスケジュールが続くチームとそうでないチームと別れたときにCLの試合後、リーグで中堅以下のチームと戦ったときに選手のモチベーションが続くのかなと疑問に思う。だから、ローテーションで選手を使いたいんだろうけど、今シーズンはうまくハマっていないし、ケガ人が多いことが大きな問題になる。

 確実に点がとれるのが、ベンゼマ一枚じゃ埋めきれないし、彼も得点を奪うことに関してトップ・トップの選手ではない。格下と戦うとき、ハードスケジュールになったときにジダンが向き合い続ける課題になるような気がする。

 今回のクラシコはバルサもいいところが探せばあったし、でも結果的にはマドリーの最後尾からのひし形で形成される守備に象徴されていた。前半にメッシがセルヒオ・ラモスを剥がして右足でシュートを打ったシーンがあったけど、あのシーンで最悪なのは左足で打たれることだった。

 実際にラモスはあっさりシュートを打たれたとはいえ、マドリーからすると最低限の右足シュートで終わらせているんだよね。それに対する信頼感という意味では、クルトワというビッグセーバーがいる。コウチーニョがヘディングシュートを打ったシーンがあったけど、近いサイドのメッシにはヘッドさせず、遠いサイドのコウチーニョにヘッドをさせている。

 クルトワが正しいポジショニングをとっているからコウチーニョからするとしっかりとしたヘディングシュートを打つことでしかゴールの確率は上げられない。結果、狙いすぎて外している。一見やられているようだけど、ピッチでプレーしているマドリーの守備陣からすると「あれはOK」という正しいやられ方になっている。

 だけど、先ほども触れたとおり、僕はCLとリーガを両方追いながら戦うには難しいのではないかと現時点での印象を持っている。ただし、リーガの優勝争いという点ではめちゃくちゃおもしろいシーズンになるはず。

 現在首位のレアル・ソシエダのサッカーは、昨シーズンにも増してすごくいいのよ。“ラ・レアル”は絶対に追うべき! ウーデゴーが抜けたけど、ダビド・シルバが加入して別の意味でいいハーモニーが奏でられている。

 今後の連載で、そのあたりを紹介できれば!

分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤

【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすなが・そうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。スペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在はサッカー解説者として様々なメディアで活躍中。
 
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