技術委員会はファンに対しても報告義務がある。

技術委員会の再建こそが最重要課題。原氏(右)は専務理事から技術委員長に戻り、今度は責任を持って誰が見ても納得の後任を育てる。それが最善のペナルティではないかと、加部氏は語る。 (C) Getty Images
加部 究氏の評決
確かにアギーレを任命したことだけに絞れば、責任を問うのは無理がある。原専務理事は、4年間以上も監督としての仕事ぶりを追跡してきたし、実際能力不足が判明したわけでもない。また、八百長やロンダリング疑惑を事前に把握するのは難しい。
ただし契約書に、何らかの犯罪関与等の疑惑が発覚し、マイナスイメージが危惧される場合には、一方的に契約解除できる等のオプションが加えられていなかったとしたら、それは明白な手落ちだ。
今回解任したのは、今後の日本代表の活動に支障をきたすこと以上に、疑惑の晴れない監督が指揮を執り続けることでの印象の悪さがネックになったはずだ。疑惑は把握できなくても、それもあり得ると想定した契約書を作成するのは当然の責務だ。
日本と欧州では文化が違う。たとえ推定無罪でも、疑惑があれば日本サッカーの看板を背負わせるわけにはいかない、と事前に説明し、雇用者としての断固たる姿勢を織り込む必要はあった。
そもそも今回の契約は、原専務理事自身が否定しているのに、アギーレ自身はあちこちのインタビュー等で「4年」だと主張してきた。これは両者の解釈に齟齬があることを浮き彫りにしていたのに、日本協会側はそれを放置し弁明もない。
老若男女の登録費で支えられている日本協会は、サッカー界を仕切る特権階級の集まりではない。技術委員会が、どれだけの予算で、どんな契約をしてきたのか。その仕事ぶりは、ファンに対しても報告義務がある。
また任命責任を問うなら、むしろアギーレ以上にザッケローニについてだろう。任命はともかく、ラスト1~2年での停滞は明らかだったのに、解任に踏み切れずに惨敗を招いた責任は大きい。さらにフル代表からU-16まで敗戦続きだったことを考えれば、技術委員会の再建こそが最重要課題だ。
こうした状況を踏まえれば、原氏は専務理事から技術委員長に戻り、今度は責任を持って誰が見ても納得の後任を育てる。それが最善のペナルティだと思う。
加部 究(スポーツライター)
1958年生まれ、群馬県出身。スポーツ新聞社勤務を経て、フリーに転身。W杯は86年から7大会を取材している。著書に『大和魂のモダンサッカー』(双葉社)など。
確かにアギーレを任命したことだけに絞れば、責任を問うのは無理がある。原専務理事は、4年間以上も監督としての仕事ぶりを追跡してきたし、実際能力不足が判明したわけでもない。また、八百長やロンダリング疑惑を事前に把握するのは難しい。
ただし契約書に、何らかの犯罪関与等の疑惑が発覚し、マイナスイメージが危惧される場合には、一方的に契約解除できる等のオプションが加えられていなかったとしたら、それは明白な手落ちだ。
今回解任したのは、今後の日本代表の活動に支障をきたすこと以上に、疑惑の晴れない監督が指揮を執り続けることでの印象の悪さがネックになったはずだ。疑惑は把握できなくても、それもあり得ると想定した契約書を作成するのは当然の責務だ。
日本と欧州では文化が違う。たとえ推定無罪でも、疑惑があれば日本サッカーの看板を背負わせるわけにはいかない、と事前に説明し、雇用者としての断固たる姿勢を織り込む必要はあった。
そもそも今回の契約は、原専務理事自身が否定しているのに、アギーレ自身はあちこちのインタビュー等で「4年」だと主張してきた。これは両者の解釈に齟齬があることを浮き彫りにしていたのに、日本協会側はそれを放置し弁明もない。
老若男女の登録費で支えられている日本協会は、サッカー界を仕切る特権階級の集まりではない。技術委員会が、どれだけの予算で、どんな契約をしてきたのか。その仕事ぶりは、ファンに対しても報告義務がある。
また任命責任を問うなら、むしろアギーレ以上にザッケローニについてだろう。任命はともかく、ラスト1~2年での停滞は明らかだったのに、解任に踏み切れずに惨敗を招いた責任は大きい。さらにフル代表からU-16まで敗戦続きだったことを考えれば、技術委員会の再建こそが最重要課題だ。
こうした状況を踏まえれば、原氏は専務理事から技術委員長に戻り、今度は責任を持って誰が見ても納得の後任を育てる。それが最善のペナルティだと思う。
加部 究(スポーツライター)
1958年生まれ、群馬県出身。スポーツ新聞社勤務を経て、フリーに転身。W杯は86年から7大会を取材している。著書に『大和魂のモダンサッカー』(双葉社)など。