「八百長問題」は責任回避のための解任理由では?
後藤健生氏の評決
日本サッカー協会は、「スペインの予審裁判所が検察当局からの告発を受理したことが確認された」として、2月3日にアギーレ監督の解任を発表した。しかし、告発受理はすでに1月前半にはスペインのメディアが報じていた事実。それが、3週間も経ってから確認されたなどというのは、にわかには信じられないことだ。
これまでの報道によれば、アギーレ前監督は八百長工作に積極的に関わったわけではなく、八百長資金の捻出のために監督の口座が利用されただけのようである。しかも、告発受理とは言っても捜査はこれから始まる段階だ。
そのような段階で「八百長問題」だけを理由に解任するのは法理論的にも不当だし、正式起訴の前に解任する必要はまったくない。
では、協会はなぜ解任を決め、アギーレ前監督もその決定に従ったのか……。協会は、実際にはアジアカップでの試合内容や結果を見て解任を決定したのだろうし、アギーレ前監督もその責任を感じたからこそ解任に応じたのではないか。
準々決勝敗退という結果のすべてが監督のせいではないが、PK戦となったUAE戦ではゲームの入り方や後半の采配など、アギーレ前監督の指揮・采配に疑問は残った。また、日程が厳しい中、グループリーグ3試合で先発を固定したのも疑問点だ。
何の捜査権も持たない日本サッカー協会がいくら身辺調査をしても八百長疑惑を調査することは難しい。したがって、八百長問題だけであれば任命責任は問えない。
しかし、もし「力量不足」を理由に解任したのだとしたら、監督選任に当たった原技術委員長(当時)の責任が問われることになる。それを避けるために、協会は解任の理由を「八百長問題」だけに絞って発表したのだろう。
アギーレ解任を受けて協会は早速新監督選びを始め、世間の関心も新監督の人選に移ってしまったが、その前にまず原氏が退任し、監督選任のプロセスも再検討すべきだった。
後藤健生(サッカージャーナリスト)
1952年生まれ、東京都出身。慶応大法学部大学院修了。64年の東京オリンピックでサッカーの虜になり、W杯は74年大会から取材。著書に『世界サッカー紀行』など。
日本サッカー協会は、「スペインの予審裁判所が検察当局からの告発を受理したことが確認された」として、2月3日にアギーレ監督の解任を発表した。しかし、告発受理はすでに1月前半にはスペインのメディアが報じていた事実。それが、3週間も経ってから確認されたなどというのは、にわかには信じられないことだ。
これまでの報道によれば、アギーレ前監督は八百長工作に積極的に関わったわけではなく、八百長資金の捻出のために監督の口座が利用されただけのようである。しかも、告発受理とは言っても捜査はこれから始まる段階だ。
そのような段階で「八百長問題」だけを理由に解任するのは法理論的にも不当だし、正式起訴の前に解任する必要はまったくない。
では、協会はなぜ解任を決め、アギーレ前監督もその決定に従ったのか……。協会は、実際にはアジアカップでの試合内容や結果を見て解任を決定したのだろうし、アギーレ前監督もその責任を感じたからこそ解任に応じたのではないか。
準々決勝敗退という結果のすべてが監督のせいではないが、PK戦となったUAE戦ではゲームの入り方や後半の采配など、アギーレ前監督の指揮・采配に疑問は残った。また、日程が厳しい中、グループリーグ3試合で先発を固定したのも疑問点だ。
何の捜査権も持たない日本サッカー協会がいくら身辺調査をしても八百長疑惑を調査することは難しい。したがって、八百長問題だけであれば任命責任は問えない。
しかし、もし「力量不足」を理由に解任したのだとしたら、監督選任に当たった原技術委員長(当時)の責任が問われることになる。それを避けるために、協会は解任の理由を「八百長問題」だけに絞って発表したのだろう。
アギーレ解任を受けて協会は早速新監督選びを始め、世間の関心も新監督の人選に移ってしまったが、その前にまず原氏が退任し、監督選任のプロセスも再検討すべきだった。
後藤健生(サッカージャーナリスト)
1952年生まれ、東京都出身。慶応大法学部大学院修了。64年の東京オリンピックでサッカーの虜になり、W杯は74年大会から取材。著書に『世界サッカー紀行』など。