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最後のトヨタカップ、歩けなかったポルト司令塔にMVPを獲らせた日本人の‟神の手”【名勝負の後日談】

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年06月14日

クラブから届いた感謝のメッセージ。マニシェからの贈り物は…

PK戦の末にトヨタカップを制したポルト。この大会を最後に、翌年からはクラブワールドカップとしてリニューアルされた。写真:滝川敏之

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 結局試合は120分間でも決着がつかずPK戦にもつれ込み、マニシェは後蹴りのポルトの4人目に登場し最初の失敗をしてしまう。先蹴りのオンセ・カルダスの5人目は10番のファブロ。成功すれば、それが決着になる。しかし絶好のコースに飛んだかに見えたキックは左ポストを直撃。こうしてサドンデスに突入したPK戦は、ポルト9人目のペドロ・エマヌエルのシュートが勝利を決めた。しかもMVPはマニシェが獲得。現地で奇跡を見届けて、その瞬間に久米は号泣した。

 一方地元ポルトでは、大通りに人が溢れ歓喜が爆発した。そして数日後には、クラブ関係者から日本のフィジオセラピストへ感謝のメッセージが届いた。
「みなさんの信じ難いほどの献身が、優勝とマニシェのMVPの決め手となりました。みなさんも英雄です」

★     ★

 久米がマニシェとの再会を果たしたのは、それから数か月後のことだった。

 トヨタカップの激闘を終えたポルトは、スタジアムからそのまま空港へ直行し帰国の途に着いてしまった。

 だが久米がリスボンの学会に出席することを知り、わざわざポルトの副会長が電車の往復チケットを用意して遠路迎えに来た。

 マニシェは夫妻で、久米を高級レストランに招待し食事を楽しんだ。
「オレのパーソナルトレーナーになってくれないか」
「急にそんなことを言われても無理だよ。それより副賞のクルマは、オレのものじゃないのか?」
「あれはお金に換えてみんなで分けてしまったんだ。この食事で勘弁してくれ」

 どこまでも和やかな夜だった。(文中敬称略)

文●加部 究(スポーツライター)
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