• トップ
  • ニュース一覧
  • 最後のトヨタカップ、歩けなかったポルト司令塔にMVPを獲らせた日本人の‟神の手”【名勝負の後日談】

最後のトヨタカップ、歩けなかったポルト司令塔にMVPを獲らせた日本人の‟神の手”【名勝負の後日談】

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年06月14日

自力歩行もままならなかったマニシェの心は試合へ。「もしオレがMVPを獲ったら副賞のクルマは先生のものだ」

延長、PK戦まで突入した試合では、120分をフル出場したマニシェ。試合は圧倒的にポルトが攻め込んだが…。写真:滝川敏之

画像を見る

 早速部屋を出るとフロアで軽くジョギングをしてみて、次はダッシュに変わった。
「明日もう1回治療をしたら試合に出られるかもしれない」
「判った、だったらオレが絶対にフィールドに立たせてやる」

 翌日になると、マニシェもすっかり久米を信頼した様子でジョークも出るようになった。
「おまえの腕は怪力過ぎる。オレの腕と取り換えてくれよ」

 久米は汗だくになって治療を終えた。
「これだけやったんだからゴールを決めろよ」
「大変な試合になる。きっとPK戦狙いで相手は守りを固めてくる。でも最後に勝つのはオレたちだ」

 来日時には自力歩行もままならなかったマニシェの心は、すでに試合へ向かっていた。
「本当に神の手だな。こんなことは絶対にないと思うけど、もしオレがMVPを獲ったら副賞のクルマは先生のものだ」

★     ★

 コンディションを考えれば後半からの出場も考えられたマニシェだが、ヴィクトル・フェルナンデス監督はスタメンで起用してきた。それどころか開始1分に最初のシュートを放つ積極性も見せる。

 こうしてポルトは序盤から完全に主導権を握る。6分、南アフリカ代表のベネディクト・マッカーシーがゴールを割るがオフサイド。17分にはルイス・ファビアーノのシュートが、さらに23分にもデルレイのヘディングがゴールを襲うが、いずれもクロスバーを叩いた。南米代表のオンセ・カルダス(コロンビア)は、マニシェの予想通りに完全に守備を固めてカウンター狙いに徹し、前半をスコアレスで折り返す。

 後半に入ると、さらにマニシェが積極的に攻撃に絡み始めた。57分には得意のミドルシュートがGKエナオの正面を突き、その6分後には飛び出した守護神の位置を見極めてループで狙うが、わずかに枠を超えた。

 ポルトの攻勢は加速していく。マッカーシーのミドルシュートが再びクロスバーを直撃し、終了9分前にはマニシェのシュートがDFに当たりゴールへと向かったが、ほんの数センチだけ高過ぎてスタンドから大きなため息を引き出した。
 
【関連記事】
羽ばたいた本田、長友、香川、吉田…指揮官・反町康治は惨敗の北京五輪をどう捉えたか?【名勝負の後日談】
オシムのビジョン、ギドの本音…名役者が共演した90年W杯、西独vsユーゴの真相【名勝負の後日談】
小野伸二は「日本の宝」で「最高傑作」。“J歴代ベスト11”で称賛の嵐! 中村俊輔も「シンジしかいない」と認める
【名勝負の後日談】「ジーコの技は誰にも止められない」82W杯、ブラジル最高傑作のチームはなぜ敗れたのか?<後編>
セルジオ越後が選ぶJ歴代ベスト11「他の10人も”別格”と認めるだろうベストプレーヤーは…」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ