「この試合は、自分の中で前半のうちに追いつくか逆転しないと後半厳しいと思ったのでスイッチを入れたというか。たまたま自分がゴールを奪ったりしただけで、特別な試合ではなかったんです」
本人はその他のどの試合とも同じ気持ち、プレーだったと振り返る。ゴールに絡んだから目立って見えただけ、という見解だ。
「申し訳ないですけど、南葛SCに来てベストパフォーマンスを発揮できた試合はまだないんです」と言う本人にとって、それでもベストと言える試合は他にあった。第3節のFC.OSSA戦(6-0で勝利)だ。
「試合後、福さんに『おまえ今日手を抜いてただろ』と言われましたけど(笑)、手を抜きながらでも質は落とさず高いパフォーマンスを発揮する、というのが自分の究極の理想です。90分間、常に余力を残しておいて、ここぞという勝負所で力を発揮するみたいな。マンガでも必殺技は最後にとっておくじゃないですか(笑)」
笑いながらさらっと話す。表向き、闘志や熱量を感じさせない。しかし、実はどの試合でも「自分がやらないといけない」と心に決めている。
「キャプテンであろうとなかろうと、試合中にいいパフォーマンスを出すということは変わりません。でないとチームで発言権がなくなると思ってますから。いいパフォーマンスをしている選手だからこそ、発する言葉に力がこもると考えています」
昨シーズンより、時にボールに対する強い執着心を感じさせる強引なプレーが増えたように見える。そのことに対しては「以前からやっていた」と言う。さらに、昨シーズンより味方に対する声掛けが増えたようにも見える。そのことに対しては「要求できることが増えたから」と言う。本当に変わらないで、これまで通りのスタイルでプレーしているのかもしれない。
しかし、本人の意には反するかもしれないが、時に見せる争う姿勢や力強い言葉に、観る者の心が熱く揺さぶられていることもまた事実だ。ひょっとしたら、自分でも気づかぬところで“ある変化”が起きているのかもしれない。
(第3回に続く。次回は8月7日掲載の予定です)
取材・文●伊藤亮
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