熱血監督・池田太が明かす「ヤングなでしこ、世界一への舞台裏」

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2018年09月03日

アイデア満載のアプローチ。「なでクロ」とは??

U-20女子W杯は全6試合を戦って15試合・3失点という圧巻の数値。とりわけ選手全員のハードワークを軸とした堅守が際立った。(C)Getty Images

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 昨年10月に中国で開催されたAFC U-19女子選手権では、グループリーグで圧倒的な力を見せつけ、決勝でも宿敵・北朝鮮に1-0で競り勝って見事に優勝、ワールドカップ行きの切符を勝ち取った。
 
 ここで、池田が粋な計らいをする。選手一人ひとりに「メモ程度ですよ」とはいえ、手紙を書いて手渡したのだ。とある選手には健闘を称え、とある選手には今後の課題を明記し、とある選手には発奮を促した。「想いが伝わったのかどうかは分からないですけど、やってみる価値はあった。男子に? 絶対しませんよ!」と言って笑う。
 
 池田はやがて、嬉しい悲鳴を上げる。フランスに臨む21名を選定する段になって、数多の選択肢が生まれていたからだ。「ポジションのバランスであったり、海外の選手と戦うわけですから、スピード、パワー、高さ、テクニックとか、そこのバランスも考えなければいけない。そのうえでは良い選考をしてこれたなと思います。最高のメンバーを選べましたから」と自信を口にした。
 
 U-19女子選手権の頃になると、もはや池田は選手たちにとって父であり、兄であり、友人でさえあった。話しているうちに興奮してくると、池田は左手の手の平に拳を打ち付けて熱弁をふるう。彼女たちはこれを「フトシ・ポーズ」と命名して真似をし、「熱男」の異名も頂戴した。ともすれば調子に乗ってエスカレートしそうな彼女たちのノリを真っ向から受け止め、チームの上昇ムードに繋げていったのだから、池田の懐は深い。
 
「はしゃいだりワイワイやったりする時は思い切りやればいい。でも、どこかのきっかけでチームというのはなにかしらのミスが起こるんです。そうした局面でしっかり話し合い、理解し合えるかどうかなんです。叱ったりはしない。ただ、自分たちが立てた目標に対して、逆算した場合、これはどうなのかを考えてほしいと言う。緩めたり、引き締めたりのところですね。世界一になりたいって意識が強いグループですから、切り替えも見事でしたよ」

 
 言葉を大事にし、最新の注意を払ったという。どう伝えるべきかをスタッフ間で日夜話し合い、ちゃんと伝わっているのかも常に振り返り、吟味した。そんななかで、容易に共通意識を持てるようにと、攻めの形やパターンに特有の名前を付けたりもした。
 
 例えば「なでクロ」だ。なでしこクロスの略で、相手ディフェンスとGKの間に入れる低弾道のクロスを指す。これは守備側にとってはかなり厄介な代物で、オウンゴールを引き出す場合もある。とくに高さのある欧米のチームには有効な武器だと、池田は考えていた。準々決勝のドイツ戦でダメ押し弾となった宝田のゴールは、まさにこの「なでクロ」がもたらした産物。「ただのアーリークロスと言えばそこまでなんですよ。ただネーミングすることで、チームの共通言語となった。意識とイメージの共有に繋がったんです」と説明する。
 
 ワールドカップ中は、この年代の代表チームがあまり取り入れない非公開練習も実施し、対戦相手のスカウティングも時間が許す限り、徹底した。それこそJクラブで培った分析力がモノを言い、寝る間も惜しんでの作業だ。池田はこう話して、謙遜する。
 
「中2日や中3日でどんどん試合があって、かなり時間が限られていましたけど、敵をしっかりスカウティングして、相手のやり方に対して自分たちはどうするか、我々のストロングを相手にどうぶつけるべきかを研究しました。でも結局、それをミーティングで落とし込んで理解をし、ピッチの上で形にするのは彼女たちなんです。驚くほどそこがスムーズでしたし、理解が本当に早かった。見事に活きたシーンが何度もありましたから。大したものだと思いましたよ」
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