同年代の娘がいたことはひとつの助けに
言ってみればアラフィフの“オヤジ”である。いったいどのようにして20歳前の女子選手たちと向き合い、信頼を得ていったのか。池田にとって小さくない一助となっていたのが、選手たちと同年代である娘さんの存在だった。
「熱く語ろうとか、そういうふうに思って伝えてはいないんですよ。考えてきたこととアドリブと半々くらいの割合で、あとはその場その場で臨機応変にという感じ。あまり隠し立てせずに感情が出ちゃうほうなので、そのまんまでやっていただけなんです。ただ、自分に同年代の娘がいたことはひとつの助けになりました。偶然ですけど、陸上をやっているから、日常会話のなかでアスリート女子の感覚みたいなものを掴めた、参考にできたというか。たまには質問もしましたよ。どんな曲で気持ちを高めるのか、仲間同士でどういうふうに感じているのか、監督に言われたひと言をどう受け止めているのか、とか。少しはあの年代の子たちの気持ちが理解できていたのかもしれませんね」
絶妙だったのが、選手に対する指示出しだ。ユース年代の男子選手と比べて、女子選手は与えられたタスクを真摯にこなすが、極端に言えばそこに没頭しがちで、プレーの柔軟性が損なわれる場合があるという。そこで池田は考えた。選手たちに“余白”を作ってあげるのが得策だと。そのアプローチが、大舞台で彼女たちの個性や独創性を引き出したのだ。
「指示といっても、あれやれこれやれといった感じではないんです。このチームに対しては本当に、ヒントを与えるくらいの感覚ですよね。こうすると優位に進められるよ、というヒント。彼女たちはちょっとした言葉がけでも、一生懸命やる。ただそればかりになる面もあったので、アイデアや選択肢が広がるような伝え方とトレーニングを常に考えましたね。コーチ陣と話をしながら、積み重ねていったものです」
決勝のスペイン戦では、その“余白”が美しい3つのゴールに繋がった。
先制点は宮澤ひなたが意表を突く位置から放ったミドルシュートで、2点目は植木理子と宝田沙織が阿吽の呼吸で見せたワンツーから生まれ、3点目は長野風花のGKをあざ笑うかのような甘美なループショット。いずれも創造性に富んだ、観る者を唸らせるファインゴールだった。
「熱く語ろうとか、そういうふうに思って伝えてはいないんですよ。考えてきたこととアドリブと半々くらいの割合で、あとはその場その場で臨機応変にという感じ。あまり隠し立てせずに感情が出ちゃうほうなので、そのまんまでやっていただけなんです。ただ、自分に同年代の娘がいたことはひとつの助けになりました。偶然ですけど、陸上をやっているから、日常会話のなかでアスリート女子の感覚みたいなものを掴めた、参考にできたというか。たまには質問もしましたよ。どんな曲で気持ちを高めるのか、仲間同士でどういうふうに感じているのか、監督に言われたひと言をどう受け止めているのか、とか。少しはあの年代の子たちの気持ちが理解できていたのかもしれませんね」
絶妙だったのが、選手に対する指示出しだ。ユース年代の男子選手と比べて、女子選手は与えられたタスクを真摯にこなすが、極端に言えばそこに没頭しがちで、プレーの柔軟性が損なわれる場合があるという。そこで池田は考えた。選手たちに“余白”を作ってあげるのが得策だと。そのアプローチが、大舞台で彼女たちの個性や独創性を引き出したのだ。
「指示といっても、あれやれこれやれといった感じではないんです。このチームに対しては本当に、ヒントを与えるくらいの感覚ですよね。こうすると優位に進められるよ、というヒント。彼女たちはちょっとした言葉がけでも、一生懸命やる。ただそればかりになる面もあったので、アイデアや選択肢が広がるような伝え方とトレーニングを常に考えましたね。コーチ陣と話をしながら、積み重ねていったものです」
決勝のスペイン戦では、その“余白”が美しい3つのゴールに繋がった。
先制点は宮澤ひなたが意表を突く位置から放ったミドルシュートで、2点目は植木理子と宝田沙織が阿吽の呼吸で見せたワンツーから生まれ、3点目は長野風花のGKをあざ笑うかのような甘美なループショット。いずれも創造性に富んだ、観る者を唸らせるファインゴールだった。
一方で、なにより強く要求したのがハードワーク。フォア・ザ・チームの精神を研ぎ澄まさせ、とりわけ攻守の切り替え時には身を粉にする献身性を引き出した。
「まさにこのグループの譲れないところがそこ。誰もがハードワークを念頭に置き、チャンスだと思ったら走る勇気が必要だと話して、奪われたら即アクションを起こすようにと、これだけは立ち上げの頃から徹底してました。それを喜びとさえ感じて取り組むチームでしたね。最初はみんな一生懸命やるんだけど、なかなかこちらが求めているレベルには達しない。だからチーム全体のスタンダードをみんなで少しずつ上げてきた。気づけば習慣づいていましたね。フランスでは文句なしのハードワークを見せてくれましたよ」
ヤングなでしこは、大会6試合で15得点・3失点という圧倒的な数字を残した。池田は「大会中は試合が終わるたびに反省ばかりしていました。次に向けて向上心を持つことが大事だったので、数字はぜんぜん見ていなかったんですよ。でも終わってみると、あらためてすごい数字だなって思いますね」と、他人事のように感心した。
「まさにこのグループの譲れないところがそこ。誰もがハードワークを念頭に置き、チャンスだと思ったら走る勇気が必要だと話して、奪われたら即アクションを起こすようにと、これだけは立ち上げの頃から徹底してました。それを喜びとさえ感じて取り組むチームでしたね。最初はみんな一生懸命やるんだけど、なかなかこちらが求めているレベルには達しない。だからチーム全体のスタンダードをみんなで少しずつ上げてきた。気づけば習慣づいていましたね。フランスでは文句なしのハードワークを見せてくれましたよ」
ヤングなでしこは、大会6試合で15得点・3失点という圧倒的な数字を残した。池田は「大会中は試合が終わるたびに反省ばかりしていました。次に向けて向上心を持つことが大事だったので、数字はぜんぜん見ていなかったんですよ。でも終わってみると、あらためてすごい数字だなって思いますね」と、他人事のように感心した。