熱血監督・池田太が明かす「ヤングなでしこ、世界一への舞台裏」

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2018年09月03日

26歳の若さで現役を引退、指導者の道へ

表彰式の後には、ヤングなでしこの教え子たちからまさかの胴上げ。さすがに恥ずかしそうな表情を見せる。(C)Getty Images

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 池田は1970年生まれ、東京の小金井市出身だ。
 
 埼玉の名門・武南高校から青山学院大学に進学し、浦和レッズの門を叩いた。時は1993年、Jリーグが産声を上げたファーストシーズンである。日本中がフィーバーに沸き返るなかで、池田は左サイドバックまたはセンターバックで出場機会を得ながら、プロのキャリアを刻んでいった。
 
 しかし、現役生活は突如として終わりを告げた。26歳の若さである。なぜか。答はシンプル。戦力外通告を受けたのが発端だ。
 
「早い話が、来季の契約がないということです。現役を続けるにしても、いまのようにJ2が整備されていた時代でもないですし、JFLもどうなのかなと思い悩んでいました。そこで背中をポンと押してくれたのが、当時レッズでGMをされていた横山謙三さんだったんです。『フトシ、お前は指導者に向いている。そちらで再スタートを切るのはどうだ』と言ってもらった。すごく考えましたね。で、いずれやるのなら、この年齢で始めるのもいいだろうと思って決めたんです。横山さんに太鼓判を押してもらってますから(笑)」
 
 以後、池田は指導者の道を堅実に歩んでいく。浦和レッズユースでのコーチを皮切りに、トップチームのコーチなどを歴任し、2012年からはアビスパ福岡でもヘッドコーチを務めた。なかでも指導者キャリアにおいて大きなウェイトを占めたのが、レッズでのコーチ時代だ。2002年から08年という、タイトルラッシュを決め込んだまさにレッズ黄金期で、ハンス・オフト、ギド・ブッフバルト、ホルガー・オジェック、ゲルト・エンゲルスといった指揮官の右腕を担った。チームとともに、2006年のJ1制覇など5つのタイトルを手中に収めたのだ。
 
「多くのタイトルを獲った時代に携わらせてもらったのは、いま振り返ってみても貴重な経験だったなと思います。勝つチームの雰囲気であったり、チームがどう盛り上がっていくのかを間近で感じられたわけですから。監督はいずれも個性的で独特でしたが、そのぶんいろんなものを学ばせてもらった。選手と監督の間に立って、個々になにが必要されているのかを考えながらトレーニングしていましたね」

 
 そして2017年2月、池田は日本サッカー協会からU-19日本女子代表監督の就任を打診される。それまで女子サッカーの指導に関わったことはなく、年代別代表の強化にも絡んだ経験はない。架け橋となったキーパーソンは、ほかでもない、なでしこジャパンの高倉麻子監督。その邂逅がすべての始まりだ。
 
「高倉さんとは指導者S級講習の同期で、ずっと懇意にさせてもらっていたんです。2010年グループですね。その後も一緒に研修に行ったり近況を報告し合ったりするなかで、僕のほうも高倉さんが当時率いていた年代別の女子代表チームの試合をチェックしたりするようになって。そして、日本サッカー協会からU-19チームの監督をやらないかとお話をもらえたんです。この世界で指導者になったからには、一度は監督をという想いはあった。加えて、日本を背負ってできる仕事なんてなかなかない。迷いはなかったですね。まったく抵抗もなかったですよ。選手たちのことはそれなりに知ってましたし、レッズのレディースチームには時折、自分のトレーニングで参加させてもらったりもしていたので。不思議とすんなり入れたかなと思います」
 
 緻密だったのが、選手のスカウティング網だ。池田とスタッフは発足からの1年半で、全国津々浦々、さまざまな大会やチームをくまなくチェックし、数え切れないほどの指導者と交流を深めた。そこには日本サッカー協会や各地域トレセンの全面バックアップも不可欠だった。「いっさいのタレントの取りこぼしを避けたかった」と力を込めたように、およそ50名の選手を招集。その一人ひとりを大切に扱い、健全な競争の図式を構築し、チームをブラッシュアップしていったのだ。
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