ポグバとイグアインの交渉は切り離されていた。
ポグバ売却決定前の7月26日、ユーベが9000万ユーロ(約108億円)の違約金を払ってイグアインを獲得した際には、「それだけの大金を積んだのはポグバの売却益で穴埋めするメドが立っているからだ」として、2つの移籍を結びつけて考える向きがほとんどだった。
しかし、私がマロッタにそれを尋ねたところ、「その可能性は高いが、我々はポグバを引き留められるなら引き留めたいと考えているし、最後の1%まであきらめないつもりだ」という答が返ってきた。
ポグバを手放さず、マリオ・ルミナ、ロベルト・ペレイラ(8月20日にワトフォードへ移籍)、シモーネ・ザザ(8月28日にウェストハムへ移籍)といった余剰戦力の売却で一部を穴埋めできるのであれば、それがベストの選択だと考えていたということだ。
実際、イグアインの獲得にはタイムリミットがあった。コパ・アメリカ・センテナリオに出場したイグアインが4週間の夏休みを終えてナポリのプレシーズンキャンプに合流する予定だったのが、7月23日だった。
イグアインが予定通りキャンプに参加すれば、移籍話は一気に複雑化してしまう。一旦チームに合流した後に移籍となれば、マスコミやサポーターが大きな騒ぎを起こすのは間違いなく、そうなるとナポリ側もあらゆる手を使って移籍を阻止しようとするからだ。そうなったら、ユーベも手を引かざるを得なくなるかもしれない。
ユーベはその前から、「違約金は必ず払うから心配しなくていい」とイグアインに言い続けていた。そういう事情があったので、マロッタはこのタイムリミットを前にして、アンドレア・アニェッリ会長に連絡を取って、「ポグバが売れるかどうかまだ確定はしていないが、それでもイグアインの獲得を決めていいか?」とお伺いを立てた。
一旦保留したアニェッリは、30~40分後にマロッタに電話をかけてOKを出している。おそらくその間に、『エクソール』(ユーベとフィアット/クライスラーグループの株を保有するアニェッリ家の持ち株会社)と話をつけたのだと思う。つまり、ポグバが売れるという確証がなかったにもかかわらず、イグアインに9000万ユーロを投じるだけの財力と決断力をユーベは持っていたということだ。
結果、ユーベは今夏だけで、サッカー史上トップ4に入る移籍劇の2つに絡んだこととなった。
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.09.01より加筆・修正。
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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しかし、私がマロッタにそれを尋ねたところ、「その可能性は高いが、我々はポグバを引き留められるなら引き留めたいと考えているし、最後の1%まであきらめないつもりだ」という答が返ってきた。
ポグバを手放さず、マリオ・ルミナ、ロベルト・ペレイラ(8月20日にワトフォードへ移籍)、シモーネ・ザザ(8月28日にウェストハムへ移籍)といった余剰戦力の売却で一部を穴埋めできるのであれば、それがベストの選択だと考えていたということだ。
実際、イグアインの獲得にはタイムリミットがあった。コパ・アメリカ・センテナリオに出場したイグアインが4週間の夏休みを終えてナポリのプレシーズンキャンプに合流する予定だったのが、7月23日だった。
イグアインが予定通りキャンプに参加すれば、移籍話は一気に複雑化してしまう。一旦チームに合流した後に移籍となれば、マスコミやサポーターが大きな騒ぎを起こすのは間違いなく、そうなるとナポリ側もあらゆる手を使って移籍を阻止しようとするからだ。そうなったら、ユーベも手を引かざるを得なくなるかもしれない。
ユーベはその前から、「違約金は必ず払うから心配しなくていい」とイグアインに言い続けていた。そういう事情があったので、マロッタはこのタイムリミットを前にして、アンドレア・アニェッリ会長に連絡を取って、「ポグバが売れるかどうかまだ確定はしていないが、それでもイグアインの獲得を決めていいか?」とお伺いを立てた。
一旦保留したアニェッリは、30~40分後にマロッタに電話をかけてOKを出している。おそらくその間に、『エクソール』(ユーベとフィアット/クライスラーグループの株を保有するアニェッリ家の持ち株会社)と話をつけたのだと思う。つまり、ポグバが売れるという確証がなかったにもかかわらず、イグアインに9000万ユーロを投じるだけの財力と決断力をユーベは持っていたということだ。
結果、ユーベは今夏だけで、サッカー史上トップ4に入る移籍劇の2つに絡んだこととなった。
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.09.01より加筆・修正。
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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