メディアが騒ぐ「OA枠問題の是非」
例えば、86年メキシコ・ワールドカップを目指した日本代表は、堅守から粘り強い戦い方で韓国との決定戦まで勝ち上がった。しかし決定戦を前に、日本国籍を取得したばかり の与那城ジョージと、当時読売クラブの得点源として活躍していた戸塚哲也を招集し攻撃力を強化する。つまりふたりの補強は、チームカラーの微妙な変化を意味した。
だが東京でのホームゲームで韓国は予想以上に慎重な入り方をしてきた。むしろ攻勢に出た日本の背後のスペースを戦術的に突き、2ゴールを奪い快勝するのだ。当時国内では最高の攻撃的MFだった与那城がスタメンとしてピッチに立ったのは、ソウルでのアウェー戦だけで「そのまま堅守スタイルを貫いたほうが良かったのでは」という声も出た。
もはや五輪が近づけば、メディアがOA枠問題で騒ぐのは恒例行事だ。そして現在スポーツ紙が盛んに取り上げるのが、大久保嘉人の招集問題である。確かに大久保なら話題性として申し分がない。J1で3年連続得点王を獲得し、通算得点記録も更新中だ。だがJ1での川崎と、五輪の中での日本の立ち位置は著しく異なる。
Jリーグ内での川崎は、圧倒的なポゼッションを誇った少し前のバルセロナと似た立場にある。12節の神戸戦を例に取れば、相手にはペナルティエリア外からのFK1本しかシュートを打たせていない。圧倒的なポゼッションで、カウンターでもボックスの中でも流麗に崩し切る。大久保は、そんな絶妙な連係の中でストレスなくプレーし、ワンタッチでゴールに流し込むのだ。つまり大久保を活かすなら、大島僚太とともに中村憲剛や小林悠も必要になる。
あくまで年齢別世界大会という位置付けの五輪は、最終目標ではない。さすがにJFAが近未来の目標を明示しているのも、フル代表のランキングやワールドカップでの成績である。それならOAの選択も、当然未来への投資を含めた判断が下されるべきだろう。五輪は結果至上でも、思い出作りの場ではない。そこは一線を画しておくべきだと思う。
文:加部 究(スポーツライター)
だが東京でのホームゲームで韓国は予想以上に慎重な入り方をしてきた。むしろ攻勢に出た日本の背後のスペースを戦術的に突き、2ゴールを奪い快勝するのだ。当時国内では最高の攻撃的MFだった与那城がスタメンとしてピッチに立ったのは、ソウルでのアウェー戦だけで「そのまま堅守スタイルを貫いたほうが良かったのでは」という声も出た。
もはや五輪が近づけば、メディアがOA枠問題で騒ぐのは恒例行事だ。そして現在スポーツ紙が盛んに取り上げるのが、大久保嘉人の招集問題である。確かに大久保なら話題性として申し分がない。J1で3年連続得点王を獲得し、通算得点記録も更新中だ。だがJ1での川崎と、五輪の中での日本の立ち位置は著しく異なる。
Jリーグ内での川崎は、圧倒的なポゼッションを誇った少し前のバルセロナと似た立場にある。12節の神戸戦を例に取れば、相手にはペナルティエリア外からのFK1本しかシュートを打たせていない。圧倒的なポゼッションで、カウンターでもボックスの中でも流麗に崩し切る。大久保は、そんな絶妙な連係の中でストレスなくプレーし、ワンタッチでゴールに流し込むのだ。つまり大久保を活かすなら、大島僚太とともに中村憲剛や小林悠も必要になる。
あくまで年齢別世界大会という位置付けの五輪は、最終目標ではない。さすがにJFAが近未来の目標を明示しているのも、フル代表のランキングやワールドカップでの成績である。それならOAの選択も、当然未来への投資を含めた判断が下されるべきだろう。五輪は結果至上でも、思い出作りの場ではない。そこは一線を画しておくべきだと思う。
文:加部 究(スポーツライター)

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