一度崩れた攻守のバランスを最後まで修正できず。
象徴的なのは、前線でフィニッシュを一手に担っているマウロ・イカルディのシュート数だ。ここまで36試合を通しての1試合平均シュートは1.7本でリーグ34位、枠内シュートも0.8本でリーグ17位という数字にとどまっている。
これだけ少ないシュート数にもかかわらず、ここまで15ゴールを挙げて得点王ランク4位につけているのは評価に値するが、チームが作り出す決定機の数が少ないことがインテルの抱える本質的な問題だったことは明らかだ。事実、シーズン通算の総シュート数(394)はナポリ、ユベントス、ローマ、ミラン、エンポリに次いでリーグ6位にとどまっている。
25節のフィオレンティーナ戦に1-2で敗れて5位に転落し、27節にはユベントスにも敗れて目標の3位から大きく遠ざかった後、マンチーニはそれまでなぜかトップ下や右サイドでしか使ってこなかったイバン・ペリシッチを、やっと本来のポジションである左ウイングで継続的に起用しはじめ、システムも4-2-3-1に固定して戦うようになる。
28節パレルモ戦からの6試合を4勝1分1敗で乗り切り、フィオレンティーナの不振にも助けられて順位も4位に浮上、33節にナポリを2-0で下した時点では3位ローマに4ポイント差まで迫り、終盤の追い上げ次第では逆転でCL出場権に手が届く可能性も出てきたかに思われた。しかし続く34節でジェノアにあっけなく0-1の敗北を喫し、この日勝ったローマとの差が9ポイントまで開いて万事休す。
結果的にマンチーニは、はっきりと守備に軸足を置いた前半戦のチームにある種の限界を感じ、後半戦に向けてそれをレベルアップしようと試みたがうまく行かず、一度崩れた攻守のバランスチームを修正できないままシーズン終盤を迎えてしまったということになる。
マンチーニは最近の会見で次のように語ってシーズンを総括している。
「目標は3位以内だった。達成できなかったのは監督である私の責任だ。得点があと10多ければ順位もローマを上回っていたはずだ。FW陣がこれしかゴールを決められないとは予想していなかった。クオリティーとパーソナリティーを高める必要がある」
このコメントからわかるのは、現在のチームを改善するためには、決定機の数を増やすよりも、決定機の得点率を高めることが重要だと考えているということ。サッカーの内容よりも個のクオリティーによって課題を解決しようというのは、マンチーニが一貫して取り続けてきたアプローチだ。だとすると、インテルが来シーズンさらに上の順位を狙えるかどうかは、もっぱら今夏のメルカート次第だということになるが……。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
これだけ少ないシュート数にもかかわらず、ここまで15ゴールを挙げて得点王ランク4位につけているのは評価に値するが、チームが作り出す決定機の数が少ないことがインテルの抱える本質的な問題だったことは明らかだ。事実、シーズン通算の総シュート数(394)はナポリ、ユベントス、ローマ、ミラン、エンポリに次いでリーグ6位にとどまっている。
25節のフィオレンティーナ戦に1-2で敗れて5位に転落し、27節にはユベントスにも敗れて目標の3位から大きく遠ざかった後、マンチーニはそれまでなぜかトップ下や右サイドでしか使ってこなかったイバン・ペリシッチを、やっと本来のポジションである左ウイングで継続的に起用しはじめ、システムも4-2-3-1に固定して戦うようになる。
28節パレルモ戦からの6試合を4勝1分1敗で乗り切り、フィオレンティーナの不振にも助けられて順位も4位に浮上、33節にナポリを2-0で下した時点では3位ローマに4ポイント差まで迫り、終盤の追い上げ次第では逆転でCL出場権に手が届く可能性も出てきたかに思われた。しかし続く34節でジェノアにあっけなく0-1の敗北を喫し、この日勝ったローマとの差が9ポイントまで開いて万事休す。
結果的にマンチーニは、はっきりと守備に軸足を置いた前半戦のチームにある種の限界を感じ、後半戦に向けてそれをレベルアップしようと試みたがうまく行かず、一度崩れた攻守のバランスチームを修正できないままシーズン終盤を迎えてしまったということになる。
マンチーニは最近の会見で次のように語ってシーズンを総括している。
「目標は3位以内だった。達成できなかったのは監督である私の責任だ。得点があと10多ければ順位もローマを上回っていたはずだ。FW陣がこれしかゴールを決められないとは予想していなかった。クオリティーとパーソナリティーを高める必要がある」
このコメントからわかるのは、現在のチームを改善するためには、決定機の数を増やすよりも、決定機の得点率を高めることが重要だと考えているということ。サッカーの内容よりも個のクオリティーによって課題を解決しようというのは、マンチーニが一貫して取り続けてきたアプローチだ。だとすると、インテルが来シーズンさらに上の順位を狙えるかどうかは、もっぱら今夏のメルカート次第だということになるが……。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。