【セリエA現地コラム】至上命題のCL出場を逃す――。インテルはなぜ失速したのか?

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2016年05月06日

相手の長所を消すサッカーに終始した。

マンチーニ監督は敵の戦術に合わせて6つのシステムを使い分けた。(C)Getty Images

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 監督がシーズンの序盤にシステムやメンバーをいくつも試すのは珍しいことではない。基本となる布陣を固めるまでに、ある程度の試行錯誤は必要だからだ。優勝したユベントスにしても、最初の10試合で4つのシステムを試しながらわずか3勝しかできなかった。快進撃が始まったのは、システムが3-5-2で固まったのとほとんど時期を同じくしている。
 
 ところがマンチーニの場合、試合ごとにシステムとメンバーを変えるのは、試行錯誤というよりもむしろ確信犯的な選択だったように見える。実際、フィオレンティーナやトリノに3-5-2、ユベントスには4-4-2と、敵の長所を消すようなシステムの噛み合わせ、そして守備優先のマッチアップを意識したメンバー選択を行なってきた。自分たちのサッカーを追求するよりもまず、相手にサッカーをさせないことを優先して試合を準備していたということだ。
 
 インテルの戦力は質と量の両面において、セリエAのほとんどのチームを上回っている。相手の狙いを封じ込めさえすれば、あとは戦力的な優位を活かし個のクオリティーでゴールを奪って勝利を手に入れることができる――。これが今シーズン、トップ3入りを義務づけられたマンチーニが選んだ、もっとも手早く、そして手堅く勝点3を積み重ねるためのアプローチだった。
 
 実際、前半戦は1-0の勝利を連発するという形でそれが狙い通りに機能した。しかし、それがかなり危ういバランスの上に成り立っていたこともまた事実だ。
 
 18節を終えた時点で首位の座を保っていたものの、2位に並ぶフィオレンティーナとナポリとの差はわずか1ポイント、そして復調して連勝を続けるユベントスにも3ポイント差まで追い上げられていた。
 
 相手を0点に抑えることに持てるリソースの大半を投下し、90分のうちになんらかの形で1点を奪えれば勝利はまず堅いが、奪えなければ0-0の引き分け止まり、逆にもしゴールを許せばかなりの確率で敗戦が待っている。格下相手にはきっちりと勝利を積み重ねたものの、フィオレンティーナに1-4、ラツィオに1-2、ナポリに1-2、ユベントスに0-0と、それなりの戦力を備えた上位チームから勝ち星を奪えなかったというのは象徴的な事実だった。
 
 そして案の定、後半戦に入るとこの危ういバランスが崩れて、インテルはズルズルと順位を落としていくことになる。年明け2試合目のサッスオーロ戦を0-1というお決まりのパターンで落としたのをきっかけに、25節のフィオレンティーナ戦までの7試合は1勝3分け3敗。たった1か月で首位から5位まで滑り落ちてしまった。
 
 この7試合は7得点・11失点。それまで保たれていた攻守のバランスが崩れたのは明らかだ。ウインターブレイクを挟んで起こったこの明らかな変化の背景には、いったい何があったのだろうか。
 
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