[東日本大震災から6年]元J1監督・清水秀彦が避難所の校庭で見た「サッカーの底力」

カテゴリ:特集

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2017年03月10日

「この大会は震災というまったく本意ではなかったところから生まれたが――『やって良かった』と心から思えた」。

2011年、宮城県サッカー場の壁に掛けられていた寄せ書き。写真:サッカーダイジェスト

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 次第に、清水の想いに賛同する人が少しずつ現われた。清水の後輩がスポンサー役に買って出てくれて、バス会社や宿泊施設も協力。救援物資の置き場になっていた宮城県サッカー場の使用許可が下り、芝生のグラウンドを4面以上使えるという、希望していた条件も満たされた。
 
 そして、毎年恒例となってきた「HEART LIGHT SENDAI CUP」(昨年は7月29、30日に開催。全16チームが参加)の前身となるサッカー大会の開催を実現させる。

 対象は「試合をする機会が限られている年代」という小学4年生(10歳)以下に限定。8人制の15分ハーフで、1チームが7月27、28日の2日間に計6試合を行なった。参加したのは、被災地の石巻市、多賀城市、名取市などを含む、計12チーム約200人。なかにはスタッフが津波にのみ込まれてしまったチームもあったという。
 
 それぞれのチーム、選手一人ひとりが様々な事情を抱えながらも、一堂に会す機会になった。清水は「中途半端な大会にはしたくない」と、移動用バス5台、全員分のユニホームを用意、遠方から訪れる選手約100人分の宿泊施設も確保した(宿泊場の「光のページェント」には、フィンランドから来日中の“本物”のサンタクロースが訪れるサプライズも用意された)。清水自身もかなりの私財を投じたそうだ。
 
 第1回の大会は成功裏に終えることができた。
 
 期間中は天候に恵まれ、石巻市のコバルトーレ女川が優勝を果たした。2日間ですっかり日焼けした清水はホッと安堵の表情を浮かべながら、噛み締めるように言った。

「この大会は震災というまったく本意ではなかったところから生まれた。でも、こうしてみんなが夢中にサッカーをしている姿を見られて、ただ、純粋に『やって良かったな』と心から思えた」

  続けて、自らに言い聞かせるようにこぼした。
 
「来年、またやりたいな。というか、絶対にやるよ。この大会を、いろんな意味で、俺たちのスタートにしなければいけないんだ」 

 
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