[東日本大震災から6年]元J1監督・清水秀彦が避難所の校庭で見た「サッカーの底力」

カテゴリ:特集

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2017年03月10日

「『サッカーどころじゃないだろ』という意見は、もっともだと思った。でも俺にはサッカーしかなかった」

99年から03年までベガルタ仙台を率いた清水。その後も、スクールを開講するなど、仙台は“第2の故郷”になった。写真:サッカーダイジェスト写真部

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 ――清水秀彦にとっての仙台とは?

 その問いに、彼はこう答える。
 
「いろんな人にお世話になったお陰で、たくさんの良い思い出を作ってきたよ。嫌な想いもたくさんしてきたけどな(笑)」
 
 ベガルタ仙台の人気の礎を築いたキーマンだ。J2時代の99年途中から仙台を率いると、元日本代表選手と既存戦力の融合を図って勝星を積み重ね、01年、東北初のJ1昇格を達成。翌年J1の舞台で開幕5連勝を果たすなどインパクトを残した。
 
 清水のタクトがサポーターと選手をつなぎ、仙台スタジアム(現ユアテックスタジアム)は劇的空間と化していった。
 
 しかし03年、仙台は開幕から低迷する。クラブは体制を変えずに最後まで戦うと公言していたが、シーズン終盤、清水は解任の憂き目に遭う。
 
 それでも、仙台には清水を必要とする人がいた。日韓ワールドカップ後、利用率が伸びずにいた宮城スタジアムと周辺施設について、関係者から「サッカー教室などを開いてくれないか」と請われた。
 
 04年、清水は現在のスポーツクラブの原点となる教室を敷地内の総合体育館で開校。その後、教え子150人を数えるまで広がりを見せた。宮城県内のみならず東北圏域の様々な地域で、講師やコーチとして招かれる機会も増えた。
 
「俺はそれまでプロ相手にしか監督をしたことがなかった。ただ、こうしていろんな世代を教えていると、正直、たくさんの発見をもらえた。教えるっていうより、俺が教えられることのほうが多かった」
 
 現在もテレビの解説などをしながら、年の半分ほどは仙台で生活をしている。仙台は、清水が多くの人を育て、そして自らも多くの人によって育てられてきた、第二の故郷――のようになっている。
 
 震災から数か月後、清水はあの避難所で誓った「子どもたちのための大会」の開催に向けて奔走し始めた。
 
 H.Sスポーツクラブの教え子とその家族全員の無事は確認できた(自宅が損壊した家庭はあった)。ただし、講習会で足を運んだ地域では、甚大な被害が確認された。そういった話を聞く度に、心が居たたまれなくなった。
 
 無力感は否めない。ただし、だからこそ、俺はまず大会を実現させるしかないんだ、そう意地のように自らに言い聞かせた。
 
 大会の話を進めようとすると、いくつもの障壁が立ち塞がった。まず使用できるグラウンドがなかった。サッカーができるフィールドのほとんどが、救援車両の駐車場、救援物資置き場、仮設住宅の建設地(予定地を含め)になっていた。加えて、大会を開催するための最低限の用具を揃えるのさえ難しいと知る。そこで協力を得ようと企業などに大会の趣旨を説明しても、ほとんど門前払いを食らった。
 
「『サッカーどころじゃないだろ』という意見は、もっともだと思った。でも、なにかしら力になりたいと考えた時、結局、俺にはサッカーしかなかった。サッカーで、どうにかして貢献するしかないんだって。だから、時間がかかってでも、賛同や協力をしてくれる人たちのパワーを結集して、やれるだけやってみようって、その想いだけはぶれなかった」
 
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