2009年・ジェフ千葉――落ちないクラブの伝統に終止符…
■Case.4 ジェフ千葉
2009年11月8日・等々力
第31節
川崎 3-2 千葉
昨季最終節、Jリーグの歴史に残る奇跡の残留劇を演じた千葉だったが、またしても残留争いに巻き込まれた今季、再び奇跡を起こすことはできなかった。
2009年11月8日、首位・川崎に敗れた千葉は、前身の古河電工時代から守り抜いてきた、唯一2部落ちのないクラブとしてのプライドと伝統をついに失った。
残留のためには勝利こそが必要だった川崎戦。35分に工藤浩平のゴールで先制しながら、55分、70分にレナチーニョにゴールを決められあっさり逆転を許すと、終了間際に同点に追いつく粘りを見せたが、直後に決勝点を奪われ、タイムアップの笛を聞いた。
「勝っても(残留争いを演じていた大宮の結果次第では)落ちる可能性はあった。厳しい状況だったけど、しっかり戦って勝つという気持ちだった」
試合後、目を真っ赤にしながら巻誠一郎は語ったが、待ち受けていたのは、先制しながら逆転される、今季を象徴するような幕切れだった。
今季開幕前の千葉には、明るい材料が揃っていた。
ここ数年の恒例行事となっていた主力の流出に見舞われることもなく、中後雅喜、福元洋平、アレックスら、各ポジションに即戦力を補強。また、昨季途中に就任し、危機的状況だったチームを救ったアレックス・ミラー監督が、シーズンの初めから指揮を執れるというのも期待を抱かせるポイントだった。
ところが、ふたを開けてみれば、昨季と変わらない千葉の姿があった。「無失点試合を増やしたい」と語るミラー監督は、例によって守備的な戦いを選択し、攻撃はロングボール一辺倒。結果重視の超現実的なサッカーで臨んだにもかかわらず、今季は結果も出せなかった。
そして19節の清水戦終了後、ミラー監督は解任された。しかし、クラブのこの判断が、結果的に千葉の伝統を崩壊させる、致命的な決断となってしまった。
後任に就いた江尻篤彦監督は、かつてイビチャ・オシム監督の下でコーチを務め、北京オリンピック代表でも反町康治監督の参謀として働いた実績を持つ。しかし、監督経験は一度もない。シーズンの折り返しを過ぎ、残留争いに巻き込まれていたチームを任せるのは無謀な賭けと言えた。
(中略)
監督交代しかり、選手補強しかり、フロントの対応が後手を踏んでしまった印象は拭えない。江尻監督就任後、12戦未勝利。その数字が全てを物語っている。
(中略)
監督、選手の流出という事情はあったにせよ、Jリーグで最も魅力的なサッカーをするチームとして認識されていた千葉は、わずか数年で、まさに下り坂を転げ落ちるかのように崩壊の道を辿ってしまった。――
(週刊サッカーダイジェスト2009年11月24日号)
2009年11月8日・等々力
第31節
川崎 3-2 千葉
昨季最終節、Jリーグの歴史に残る奇跡の残留劇を演じた千葉だったが、またしても残留争いに巻き込まれた今季、再び奇跡を起こすことはできなかった。
2009年11月8日、首位・川崎に敗れた千葉は、前身の古河電工時代から守り抜いてきた、唯一2部落ちのないクラブとしてのプライドと伝統をついに失った。
残留のためには勝利こそが必要だった川崎戦。35分に工藤浩平のゴールで先制しながら、55分、70分にレナチーニョにゴールを決められあっさり逆転を許すと、終了間際に同点に追いつく粘りを見せたが、直後に決勝点を奪われ、タイムアップの笛を聞いた。
「勝っても(残留争いを演じていた大宮の結果次第では)落ちる可能性はあった。厳しい状況だったけど、しっかり戦って勝つという気持ちだった」
試合後、目を真っ赤にしながら巻誠一郎は語ったが、待ち受けていたのは、先制しながら逆転される、今季を象徴するような幕切れだった。
今季開幕前の千葉には、明るい材料が揃っていた。
ここ数年の恒例行事となっていた主力の流出に見舞われることもなく、中後雅喜、福元洋平、アレックスら、各ポジションに即戦力を補強。また、昨季途中に就任し、危機的状況だったチームを救ったアレックス・ミラー監督が、シーズンの初めから指揮を執れるというのも期待を抱かせるポイントだった。
ところが、ふたを開けてみれば、昨季と変わらない千葉の姿があった。「無失点試合を増やしたい」と語るミラー監督は、例によって守備的な戦いを選択し、攻撃はロングボール一辺倒。結果重視の超現実的なサッカーで臨んだにもかかわらず、今季は結果も出せなかった。
そして19節の清水戦終了後、ミラー監督は解任された。しかし、クラブのこの判断が、結果的に千葉の伝統を崩壊させる、致命的な決断となってしまった。
後任に就いた江尻篤彦監督は、かつてイビチャ・オシム監督の下でコーチを務め、北京オリンピック代表でも反町康治監督の参謀として働いた実績を持つ。しかし、監督経験は一度もない。シーズンの折り返しを過ぎ、残留争いに巻き込まれていたチームを任せるのは無謀な賭けと言えた。
(中略)
監督交代しかり、選手補強しかり、フロントの対応が後手を踏んでしまった印象は拭えない。江尻監督就任後、12戦未勝利。その数字が全てを物語っている。
(中略)
監督、選手の流出という事情はあったにせよ、Jリーグで最も魅力的なサッカーをするチームとして認識されていた千葉は、わずか数年で、まさに下り坂を転げ落ちるかのように崩壊の道を辿ってしまった。――
(週刊サッカーダイジェスト2009年11月24日号)