【回想】「オリジナル10」5チームのJ2降格の瞬間――週刊SDの記事で振り返る

カテゴリ:Jリーグ

サッカーダイジェスト編集部

2015年10月16日

2002年・サンフレッチェ広島――繊細な猛反撃の終焉

ガジ・ガジエフ監督はチームをまとめることができずにシーズン途中に帰国。これが最後まで響き、(ステージ)優勝経験のあるクラブとしては初のJ2降格となった。 (C) SOCCER DIGEST

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■Case.2 サンフレッチェ広島
 
2002年11月30日・札幌ドーム
セカンドステージ15節
札幌 5(延長)広島
 
 90分間を戦って4-4。
 
 延長戦に突入した段階で、柏と神戸が勝利しており、広島のJ2降格は決まっていた。だがプレー中の選手たちは、その事実を知らない。
 
 99分、森秀昭のクロスに合わせた曽田雄志に決勝のVゴールを叩き込まれた時、奇跡の残留を信じていた広島イレブンからは立ち上がる力が失われていた。
 
 鹿島、柏と撃破して波に乗っていた広島だが、この日はホームの熱狂的なサポートを受ける札幌相手に、序盤からリズムを掴めずにいた。
 
 ラインを終始引き気味に構える札幌は、西田吉洋と和並智広の左右のサイドハーフとボランチの今野泰幸が守備のバランスを図っていく。
 
広島はサイド攻撃を封じられ、逆にカウンターを許していった。札幌の逆襲を受けて立つ形になり、ボールを奪取されロングボールを次々に放り込まれていったのだ。失点の大半はシンプルなアタックからである。
 
 連勝の勢いは、たしかに本物だった。広島には、逆転するだけの底力があった。1-1で後半に折り返すと、沢田謙太郎に代わって藤本主税を投入。一度目の勝ち越し点となるPKは、藤本のドリブルと森﨑浩司の前線への果敢な攻撃参加が生んだものだ。
 
 この試合のポイントは、53分に茂木弘人が追加点を奪い、広島が3-1になった以降にある。森﨑和幸は「後半からは攻め過ぎて、守りがおろそかになった面があるかもしれない」と振り返る。
 
 残留のためには、できるだけ点を取らなければならない。それは分かる。だが3-1の時点でゲームを落ち着かせ、相手に攻めさせてカウンターを狙う。そういった、緩急の変化で、主導権を自分のモノにするという選択肢も考えられたはず。だがあくまでもチャージを続け、力尽きた。
 
 これは、指揮官のビジョンによるところが大きい。このようなナイーブさは、来季参入するJ2では、より大きな致命傷になりかねない。
 
 最後まで続いたビジョンなき混乱で、広島の猛反撃が終わった。
 
(週刊サッカーダイジェスト2002年12月17日号)
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