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「フットボールの原点がそこにある」森山直太朗が“応援歌”に込めた、高校サッカーと選手権への無上の愛

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2021年12月28日

一番は野口さん。お会いしたときはなんもしゃべれなかった。

市立船橋高時代の野口氏(左)と清水商高時代の藤田氏(右)。どちらも森山さんがかつて憧れたアイドルだ。(C)SOCCER DIGEST

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 いったいどんなプレーヤーだったのか。音楽の世界で天才的な閃きを発露するアーティストだけに、10番でファンタジスタという勝手な妄想を抱いていたが、「いやいやまったく。僕はボランチで、(ジェンナーロ・)ガットゥーゾみたいな選手ですね。どんどん球際行って、本田泰人さんのようなタイプでした」と来た。「僕はソロシンガーで活動していますけど、みんなでなにかやるときは、基本的にはサッカーで培ったチームプレーがある。成功体験や失敗体験も、今の活動の礎になっています」と、しみじみ語る。

 とはいえ、憧れを抱いていた選手権のヒーローたちはキラ星ばかりだ。

「一番はね、(市立船橋高の)野口幸司さんです。あとは暁星の吉井(秀邦)さんや、キヨショウ(清水商高)の(藤田)俊哉さん。野口さんに一度お会いしたときは、好きすぎてなんもしゃべれなかったです。太ももにぐるぐる巻きのテーピングしてるのがカッコ良くて、真似してましたよ。ぜんぜん痛くもないのにマネージャーに『巻いてもらってもいい?』って。憧れでした。

 布(啓一郎)監督と大滝(雅良)監督の名将も忘れられません。小倉(隆史)さんと会ったときも興奮しちゃいました。四中工の松本(安司)さんのオーバーヘッドもみんな真似して、肩を脱臼するヤツとかいたり。いやぁ、高校サッカーの話はホント、尽きないですね」

 選手権と音楽となれば、やはり外せないのが名曲『ふり向くな君は美しい』だろう。あのメロディに重ねて感動的な場面でも見てしまったら、いとも容易く涙してしまうファンは多いはずだ。

 かの一曲に、アーティスト・森山直太朗はどんな印象を抱いているのか。

「なんだろ、スイッチ入りますよね。イントロが流れた瞬間に。僕はザ・バーズが歌っている合唱も良いけど、トランペットだけのインストゥルメンタルも好きなんですよ。あれ、試合のエンディングとかに効果的に流れるんですよね。いまでもひとりでカラオケで歌ったりしてますよ。かぶせとかもひとりで(笑)。

 あと、大会ごとにキャッチフレーズがありましたよね。『感動ください……』、『ときめきを今……』とか。実況の方が名ゴールが生まれたときに連呼するのが印象的で、『完全燃焼4800秒!』」とか(笑)。実はあのキャッチコピーのところも、今回の歌詞作りですごく大きかったんです。

 100回大会のテーマソングは、『ふり向くな君は美しい』を誰かがカバーしてもいいんじゃないか、あるいは僕がカバーして歌うのはどうですか、とも思ったくらいです。あのイズムや懐かしさ、キャッチフレーズに託されたものというのは、僕の高校サッカーの原風景。良い意味で感化されてきたし、今回も歌詞はシンプルな言葉を意識しましたね」

 サッカーと音楽の親和性については、明確なイメージを持っている。

「この曲のなかでも最後に大団円を入れた。小さい頃から、欧州や南米のスタジアムでみんなが大合唱しているのを聴いてきた。サッカーは独特な文化を持っている。例えば、ロナウジーニョのプレーなんてまさしくサンバのリズムだし、音楽的なスポーツなんじゃないかと思うんですよね。

 歴史のあるスポーツだからこそ、とくにヨーロッパでは、神聖な部分もある。サポーターのみなさんや部員のみなさん、ブラスバンドのみなさんと一緒に、最後の大団円のフレーズとかがグラウンドに鳴り響いてたら、めちゃめちゃ嬉しいですね」
 
 国内外のサッカーに精通している森山さん。好きなクラブは「バルセロナとかマンチェスターユナイテッドとか、アヤックスとか伝統とイズムのあるチーム」で、「少し低迷したりしても、最後はそこを頼りにしっかり復活してきますからね」と力説する。

 Jリーグにも関心を寄せるなか、いま一番興味があるとして挙げたのは、意外なチームの名だった。

「(JFLの)いわきFCですね。暁星出身の大倉(智)さんが代表を務めていて、来季はいよいよJ3に挑戦することが決まった。今後どうなっていくのか、すごく興味がありますよ。地元に貢献する考え方ってすごく大事だと思うし、言わば、思想を持った巻き込み型のクラブじゃないですか。どれだけサプライズを起こせるのか。どんどん上がっていってほしい」

 最後に、第100回大会を戦う48代表校の選手たちへのエールをお願いした。森山さんらしい、熱くも優しいメッセージだ。長きに渡って高校サッカーを愛してきたファンの心にも、ずしんと響くのではないだろうか。

「曲の中でも歌っているんですけど、無心でボールを追い続けて、走り切ってほしい。結果はついてくるもの。個人個人が納得いくまで走り抜いてほしい。それがフットボールの原点。いまは合理性とか戦術とか、勝ちに傾いてしまいがちだけど、サッカーの基本ってやっぱりそこにあると思うんです。

 どんなにレベルが高い欧州サッカーよりも、高校サッカーを観るほうが胸の躍る瞬間、熱くなるときがあるんですよね。ある時期のなでしこジャパンにも通じるところです。パワーとスピードこそプロには劣るけど、フットボールがそこにある。あらためてその原点を、僕らに見せてほしいなって思います」

<了>

取材・文●川原崇(サッカーダイジェスト)

PROFILE
森山直太朗/もりやま・なおたろう
1976年4月23日、東京都生まれ。少年時代よりサッカーに情熱を傾ける日々を経て、大学時代より本格的に楽曲作りを開始。2002年10月にミニ・アルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビュー以来、独自の世界観を持つ楽曲と唯一無二の歌声が幅広い世代から支持を受け、コンスタントにリリースとライブ活動を展開し続けている。 20年にはNHK連続テレビ小説『エール』に出演し、俳優としても高い評価を得るなか、今年からデビュー20周年イヤーに突入。精力的な創作活動を続け、11月24日には新曲『それは白くて柔らかい』を配信リリースした。

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