前半を０−１でしのいだ後、後半のユーベは、リスクを冒さずカウンターを狙うというアプローチで、正しい攻守のバランスを見出したように見えた。
 
　55分の同点ゴールは、守備におけるバルサの弱点をうまく突いてもぎ取ったものだった。
 
　バルサは、ボールロスト直後、あるいはイーブンボールに対してアグレッシブにプレッシャーをかけ、囲い込んでボールを奪い取ろうとするが、そのプレスを外されると一気に数的不利に陥るか、そうでなくとも陣形のバランスが崩れて危険なスペースを与えることになりやすい。
 
　しかもそうして後手に回った場面でも、ディレイするよりは無理にボールに食いついていく傾向があるため、最終的にフリーの相手が残ることになる。
 
　この同点ゴールの場面でも、最初はマルキージオ、次はリヒトシュタイナーに群がった一方、ゴール前ではテベスがピケと１対１、さらにファーサイドではモラタとポグバがフリーになっていた。
 
　テベスがピケをうまくかわしてシュート、テア・シュテーゲンはよく反応してセーブしたが、こぼれ球が倒れた自分とは反対側のモラタの足下に流れたのは不運だった。
 
　とはいえ、リヒトシュタイナーのパスがテベスに渡った時点で、状況としては「詰んで」いたと言ってもいい。
 
　この同点ゴールの後、前がかりになって攻勢に出たユーベの振る舞いは、マイナスの結果をもたらすことになった。
 
　しかし、この勇気ある選択がPKあるいはゴール（テベスが一度いい形でシュートを打っている）につながっていれば、試合結果も、そして評価もまったく違うものになっていたわけで、アッレグリ監督とチームの選択を一方的に責めることはできない。
 
　個人的には、もう少し落ち着いて試合をコントロールして、相手の精神的、肉体的消耗を待ってから勝負をかけても（あるいはそのままカウンターのチャンスを狙い続けても）よかったと思うが……。
 
　バルサは、いつものように自分たちのサッカーをして、メッシをはじめとするワールドクラスが違いを作り出し、順当な勝利を収めた。
 
　ユーベはそれを覆す機会を得たが、十分に活かすことができなかった。個人能力で違いを作り出すべきテベス、ピルロがやや期待を裏切る低調なパフォーマンスに終わったこともあるし、繰り返しになるが同点に追いついた後のゲームプランが裏目に出たこともある。
 
　とはいえ、持てる力をほぼ出し切って最後まで食い下がったことは確かであり、その点は称賛に値すると思う。
 
分析：ロベルト・ロッシ
取材・構成：片野道郎
 
【ロベルト・ロッシ】1962年３月16日生まれのイタリア人監督。現役時代はMFで、元イタリア代表監督のアリーゴ・サッキや元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニに師事。99年に引退し、2001～08年はインテルなどでザッケローニのスタッフ（コーチ兼スカウト）。その後は下部リーグで監督を務め、現在はフリー。