唯一足りない「欧州王者」の称号を追いかけて。
ユベントスではセリエAを6度制覇し、イタリア代表では2006年のドイツ・ワールドカップで頂点に立った。
個人タイトルにも恵まれている。セリエA最優秀GKに9回、UEFA最優秀GKに3回、IFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)選定の年間最優秀GKに4回輝いた。
2001年夏にパルマからユベントスに移った際の移籍金5100万ユーロは、いまだ破られていないGKとしての史上最高額だ。
ジャンルイジ・ブッフォンの20年間に及ぶプロキャリアは、文字通り栄光に彩られている。
しかし、このサッカー史上最高峰の守護神にも、手にできていないタイトルがある。チームとしての「欧州王者」の称号だ。
02-03シーズンのチャンピオンズ・リーグ決勝は、ACミランの猛攻を防いで無失点に抑えたものの、PK戦の末に敗れ去った。
EURO2012決勝は、前人未到のメジャートーナメント3連覇を成し遂げるスペイン代表に4ゴールを叩き込まれ、敗れ去った。
今回のファイナルは、ブッフォンにとって「三度目の正直」を果たす舞台だった。対戦相手は、世界最強の3トップを擁するバルセロナ。挑みがいのある強敵だった。
開始4分、細かいパス交換から、ラキティッチにいきなりゴールを割られた。
それでも、その後はなんとか耐え忍ぶ。
13分、死角から撃たれたD・アウベスの難しいシュートを、逆を突かれながらも左手一本で弾き出した。
27分、ネイマールの勢いのないミドルシュートをキャッチ。
40分、スアレスが放ったトゥーキック変則ミドルを右手の指先でセーブ。
前半をなんとか1失点に抑え、後半に望みを繋いだ。
48分、ほぼフリーだったスアレスがふたたびトゥーキックで狙ったシュートを、またもや右手でパンチング。この日一番のビッグセーブだった。
55分のモラタのゴールは、こうして4本の枠内シュートを防いだブッフォンの活躍がなければ、焼け石に水だったはず。守護神の奮迅が生んだ同点弾だったと言えるだろう。
ところが、その13分後だった。メッシのドリブルシュートに鋭く反応したものの、そのこぼれ球をスアレスに押し込まれてしまった。
そして終了間際の97分、ネイマールに股を抜かれて決定的な3点目を献上……。
欧州王者の称号は、またしても目前でするりと逃げていった。
あの3ゴールはすべてGKにはノーチャンスだった。試合後にはそんな声も聞かれた。はたして、そうだろうか。
ハンドの判定で取り消されたネイマールの幻のヘッドを含めた4つのゴールは、いずれも「スーパーマン」と呼ばれていた10年前のブッフォンなら、まず間違いなく防いでいただろう。すでに37歳。反応スピードなどフィジカル面の衰えは否めない。
それでも、まだ歩みを止める気はない。
「後半はいけると思った時間帯もあったけど、残念ながらそうはならなかった。世界最高のチームが勝った。公平な結果だと思う。でも、僕らは良い試合をした。恥じる必要はない。あと3年はトップレベルでプレーしたい。まだ叶えたい夢がいくつか残っているんだ」
その夢のひとつは、欧州制覇だろう。本当にあと3年、40歳までプレーするとしたら、チャンピオンズ・リーグは3回、EUROは1回チャンスがある。
もう、ブッフォンはスーパーマンではない。だが、この決勝でもそうだったように、フィジカルの衰えはポジショニングや予測でなんとかカバーしうる。ノイアーやクルトワ、デ・ヘアなど20代のワールドクラスと比較しても、安定感や信頼性を含めた総合力では見劣りしない。まだトップレベルで戦える守護神だ。
戦える自負がある限り、ブッフォンは夢を諦めない。
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト特派)
個人タイトルにも恵まれている。セリエA最優秀GKに9回、UEFA最優秀GKに3回、IFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)選定の年間最優秀GKに4回輝いた。
2001年夏にパルマからユベントスに移った際の移籍金5100万ユーロは、いまだ破られていないGKとしての史上最高額だ。
ジャンルイジ・ブッフォンの20年間に及ぶプロキャリアは、文字通り栄光に彩られている。
しかし、このサッカー史上最高峰の守護神にも、手にできていないタイトルがある。チームとしての「欧州王者」の称号だ。
02-03シーズンのチャンピオンズ・リーグ決勝は、ACミランの猛攻を防いで無失点に抑えたものの、PK戦の末に敗れ去った。
EURO2012決勝は、前人未到のメジャートーナメント3連覇を成し遂げるスペイン代表に4ゴールを叩き込まれ、敗れ去った。
今回のファイナルは、ブッフォンにとって「三度目の正直」を果たす舞台だった。対戦相手は、世界最強の3トップを擁するバルセロナ。挑みがいのある強敵だった。
開始4分、細かいパス交換から、ラキティッチにいきなりゴールを割られた。
それでも、その後はなんとか耐え忍ぶ。
13分、死角から撃たれたD・アウベスの難しいシュートを、逆を突かれながらも左手一本で弾き出した。
27分、ネイマールの勢いのないミドルシュートをキャッチ。
40分、スアレスが放ったトゥーキック変則ミドルを右手の指先でセーブ。
前半をなんとか1失点に抑え、後半に望みを繋いだ。
48分、ほぼフリーだったスアレスがふたたびトゥーキックで狙ったシュートを、またもや右手でパンチング。この日一番のビッグセーブだった。
55分のモラタのゴールは、こうして4本の枠内シュートを防いだブッフォンの活躍がなければ、焼け石に水だったはず。守護神の奮迅が生んだ同点弾だったと言えるだろう。
ところが、その13分後だった。メッシのドリブルシュートに鋭く反応したものの、そのこぼれ球をスアレスに押し込まれてしまった。
そして終了間際の97分、ネイマールに股を抜かれて決定的な3点目を献上……。
欧州王者の称号は、またしても目前でするりと逃げていった。
あの3ゴールはすべてGKにはノーチャンスだった。試合後にはそんな声も聞かれた。はたして、そうだろうか。
ハンドの判定で取り消されたネイマールの幻のヘッドを含めた4つのゴールは、いずれも「スーパーマン」と呼ばれていた10年前のブッフォンなら、まず間違いなく防いでいただろう。すでに37歳。反応スピードなどフィジカル面の衰えは否めない。
それでも、まだ歩みを止める気はない。
「後半はいけると思った時間帯もあったけど、残念ながらそうはならなかった。世界最高のチームが勝った。公平な結果だと思う。でも、僕らは良い試合をした。恥じる必要はない。あと3年はトップレベルでプレーしたい。まだ叶えたい夢がいくつか残っているんだ」
その夢のひとつは、欧州制覇だろう。本当にあと3年、40歳までプレーするとしたら、チャンピオンズ・リーグは3回、EUROは1回チャンスがある。
もう、ブッフォンはスーパーマンではない。だが、この決勝でもそうだったように、フィジカルの衰えはポジショニングや予測でなんとかカバーしうる。ノイアーやクルトワ、デ・ヘアなど20代のワールドクラスと比較しても、安定感や信頼性を含めた総合力では見劣りしない。まだトップレベルで戦える守護神だ。
戦える自負がある限り、ブッフォンは夢を諦めない。
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト特派)