枠内シュート1本で勝ったQPR戦がひとつの転機に。
山中:でも4月頃からはチームの決定力自体が落ちてきていたし、それでもタイトルに確実に近づいていったということで、わだかまりも消えていったんじゃないですかね。
そもそもセスクがプレミアに戻ってくる時に、アーセナルではなくてチェルシーを選んだのは、やっぱりリーグ優勝の確率が高いという気持ちが、大きな要因として働いていたわけですから。もちろん給料の額はもっと高いという理由もあったんでしょうけど。
田邊:ですよね。僕がセスクだったら、やっぱりウェストハムじゃなくて、チェルシーを選ぶもんな(笑)。
山中:そりゃ誰だってそうでしょ(笑)。
真面目な話をすると、これはさっき僕が言ったふたつ目の勝因、シーズンの前半と後半で戦い方を使い分けることができたという点に関係してくるんです。
前半はコスタの調子も良かったし、モウリーニョはアブラモビッチが望んだ通りの攻撃的なサッカーを、ある程度実現できていた。
でも後半になれば当然、相手のチームも必死になってくるし、コスタがハムストリングを痛めたり、カードの累積で主力が試合に出られないケースも増えてきてしまう。そこでモウリーニョは、オーナーも納得ずくで自分の色を出し始めて、しぶとい戦い方で勝利を引き寄せていった。
そこで存在感をさらに増してきた選手のひとりが、セスクだったという解釈になるんじゃないですか。
田邊:ええ。だからたとえば前半戦を象徴するのが6-3のエバートン戦だとするなら、後半戦を象徴するのは、ユナイテッド戦の直前に行なわれたQPR戦(32節)だったような気がするんですよね。チェルシーは枠内シュート1本で、1-0の勝利でしょう? しかも88分にシュートを決めたのはセスクだった。
年が明けてから一時期チームの調子が落ちたのに、そこから立ち直ってきたのは、しぶとくロースコアで勝ちきれるようになったのが大きい。その意味でもQPR戦は、ひとつの転機になったのかなと。
山中:そう思いますね。なんといってもチェルシーは、「7-0で1試合に勝つよりも、1-0で7試合に勝つ方がいい」と言い切れる監督のチームですから。逆に前半戦は、1-0の勝利がほとんどなかった。
田邊:その辺りの変遷はすごく面白いですね。最近、日本の某雑誌に長い記事を書いたんですが、チェルシーに戻ってきてからのモウリーニョは、いろんなタイプの10番を使い分けながら、密かに戦術の実験をやっていた。その過程でかなり攻撃的なサッカーにシフトしてきていたんですが、勝負所がくると、きっちり締めた戦い方にもスイッチできる。
山中:ズマをボランチで起用したりして。モウリーニョが揺れ動いているわけじゃないにしても、プレミア王座奪回を果たした後で、どっちの方向に本気で向かっていくかは興味深いですよね。モウリーニョという監督の本質を見極める上でも、戦術の進化を占う点でも。
田邊:ええ。プレミアを離れてヨーロッパ全体で見た場合、この2年間は「ティキタカ」式のポゼッションサッカーに対する反動として、カウンターサッカーが復権してきた。
もちろんポゼッションかカウンターかという、二者択一の安易な議論ほど危険なものはないんだけど、両者をどうやってバランスさせるか、勝つためにはいかなるサッカーが望ましいのかというテーマに対して、モウリーニョがどんな回答を提示するのかというのは楽しみですね。
それはひいてはチェルシーというチームの内部事情、モウリーニョとアブラモビッチの関係にも影響されてくるんでしょうけど。
そもそもセスクがプレミアに戻ってくる時に、アーセナルではなくてチェルシーを選んだのは、やっぱりリーグ優勝の確率が高いという気持ちが、大きな要因として働いていたわけですから。もちろん給料の額はもっと高いという理由もあったんでしょうけど。
田邊:ですよね。僕がセスクだったら、やっぱりウェストハムじゃなくて、チェルシーを選ぶもんな(笑)。
山中:そりゃ誰だってそうでしょ(笑)。
真面目な話をすると、これはさっき僕が言ったふたつ目の勝因、シーズンの前半と後半で戦い方を使い分けることができたという点に関係してくるんです。
前半はコスタの調子も良かったし、モウリーニョはアブラモビッチが望んだ通りの攻撃的なサッカーを、ある程度実現できていた。
でも後半になれば当然、相手のチームも必死になってくるし、コスタがハムストリングを痛めたり、カードの累積で主力が試合に出られないケースも増えてきてしまう。そこでモウリーニョは、オーナーも納得ずくで自分の色を出し始めて、しぶとい戦い方で勝利を引き寄せていった。
そこで存在感をさらに増してきた選手のひとりが、セスクだったという解釈になるんじゃないですか。
田邊:ええ。だからたとえば前半戦を象徴するのが6-3のエバートン戦だとするなら、後半戦を象徴するのは、ユナイテッド戦の直前に行なわれたQPR戦(32節)だったような気がするんですよね。チェルシーは枠内シュート1本で、1-0の勝利でしょう? しかも88分にシュートを決めたのはセスクだった。
年が明けてから一時期チームの調子が落ちたのに、そこから立ち直ってきたのは、しぶとくロースコアで勝ちきれるようになったのが大きい。その意味でもQPR戦は、ひとつの転機になったのかなと。
山中:そう思いますね。なんといってもチェルシーは、「7-0で1試合に勝つよりも、1-0で7試合に勝つ方がいい」と言い切れる監督のチームですから。逆に前半戦は、1-0の勝利がほとんどなかった。
田邊:その辺りの変遷はすごく面白いですね。最近、日本の某雑誌に長い記事を書いたんですが、チェルシーに戻ってきてからのモウリーニョは、いろんなタイプの10番を使い分けながら、密かに戦術の実験をやっていた。その過程でかなり攻撃的なサッカーにシフトしてきていたんですが、勝負所がくると、きっちり締めた戦い方にもスイッチできる。
山中:ズマをボランチで起用したりして。モウリーニョが揺れ動いているわけじゃないにしても、プレミア王座奪回を果たした後で、どっちの方向に本気で向かっていくかは興味深いですよね。モウリーニョという監督の本質を見極める上でも、戦術の進化を占う点でも。
田邊:ええ。プレミアを離れてヨーロッパ全体で見た場合、この2年間は「ティキタカ」式のポゼッションサッカーに対する反動として、カウンターサッカーが復権してきた。
もちろんポゼッションかカウンターかという、二者択一の安易な議論ほど危険なものはないんだけど、両者をどうやってバランスさせるか、勝つためにはいかなるサッカーが望ましいのかというテーマに対して、モウリーニョがどんな回答を提示するのかというのは楽しみですね。
それはひいてはチェルシーというチームの内部事情、モウリーニョとアブラモビッチの関係にも影響されてくるんでしょうけど。