各国のサッカー事情に通じたエキスパート２人を迎え、クロストークで掘り下げる新連載がスタート！
 
　プレミアリーグを中心に、広くイングランド・サッカーを深掘りするのは、フリーランスとして様々な媒体で健筆を振るう田邊雅之氏とロンドン在住の山中忍氏。
 
　代表ウィークでプレミアリーグが中断していたこともあり、不甲斐ないイングランド代表への“突っ込み”で放談はのっけから熱を帯び……。
 
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田邊雅之：日本では、ハリルホジッチさんが代表監督になってからの２戦目、ウズベキスタンに５−１で大勝した日に、イングランドはイタリアとアウェーで親善試合をやったんですが、こちらの方の結果は１−１の引き分けで渋かったですね。
 
山中忍：まあ、後半盛り返してイタリアに追いつく形になったので、そこだけを見れば評価できるんでしょうけど、内容は微妙というか。選手の起用法を変えたり、システムを２トップのダイヤモンドにしたりしたんだけど、結局、試合の流れが変わったのはアクシデント————スモーリングが体調不良でリタイアをしたのを受けて、ジョーンズをバックラインに下げたのがきっかけだったわけで。
 
田邊：プラス・マイナス・ゼロというか、良くもなければ悪くもないし、変わっていないと言った方が、いいのかもしれない。ホジソンはブラジルW杯の直前に大胆に戦術やメンバーを変えたりしたんですけど、“確変”はそこで終わってしまった感がある。
 
山中：そうなんですよ。ブラジルからもあっという間に帰ってきたし、W杯の後、いまだに負けていないというのが必要以上に騒がれているような。
 
田邊：金曜日のEURO2016予選で、リトアニアを４−０で下したと言っても、まあそりゃあそうだろうと。
 
山中：勝って当然の相手にホームで勝って、大勝だの無敗だのと喜んでいていいのかという。
 
田邊：EURO2008の予選で、マケドニア相手に本気で苦しんだりした頃よりは、ましですけどね。
 
山中：サンマリノ相手に攻めあぐむとか（笑）。
 
田邊：それはそうと、タブロイドにしてもブロードシート（高級紙）にしても、先週のフットボール欄の１面は、トットナムのケイン一色だった。
 
山中：煽動型メディアの本領発揮（笑）。ハリー・ケインという名前にひっかけて見出しを「ハリケーン」にするとか。『サン』なんかは、ケインの名前の発音が俳優のマイケル・ケインと同じだということで、マイケル・ケインが出演した1960年代の映画、「ミニミニ大作戦」をパクって、ケインとルーニー、GKのジョー・ハートの３人がミニクーパーに乗っている、コラージュ写真をわざわざ見開きで載せたりしていた。
 
田邊：今シーズンのプレミアで一番注目を集めているFWが、イタリア戦で初先発すると言われたわけだから。でも実際には、さほどパッとしなかった印象があります。
 
山中：イタリアはうまかったですよね。中盤からのパスのルートを断って、あまりボールに絡めないようにしていた。３月１日に行なわれたリーグカップの決勝戦で、モウリーニョがやったのと似たようなことを、コンテもやった形になる。
 
田邊：ケインは決して引き出しがないわけじゃないんだけど、基本的にはシアラーと同じように割とオーソドックスなタイプのFWだから、孤立する場面が目立ちました。『ガーディアン』のドミニク（ファイフィールド）が書いた記事のタイトルは、紙媒体だと「リアリティ・バイツ（現実の厳しい洗礼）」なんだけど、電子版には「オンリー・ザ・ロンリー（前線でひとりぼっち）というキャッチがついていた。