「そうすると、たとえ結果が伴わなかった試合でもうまくいっている部分もあるのに、全てが悪い、という捉え方になってしまう。このような雰囲気では、ミスが出た時に余計気落ちしてしまって、みんなで助け合おう、というポジティブな姿勢にはなりづらい」
Jリーグでもつなぐサッカーをしているチームでは、そのスタイルを作り上げる過程において、チャレンジしてのミスには指揮官も寛大だという。
ミスを恐れず、またミスしてもカバーする雰囲気を生むには、どこかで「ミスも想定内」という許容の余地を残す寛容さみたいなものが必要になるのかもしれない。しかし「つなぐサッカー」に執着するあまり、そして期待に対する責任感の強さのあまり、自らをきつく縛ってしまうと心理的なゆとりが失われ、縛りはどんどんきつくなり呪縛のようなものになってしまう。それこそが今シーズンの南葛SCが陥った抜け出せない負の雰囲気の連鎖、その原因であったかもしれない。
「これは南葛に限ったことではなく、結果が出ていないチームに起こりがちなことといいますか。熊本でプレーしていた時も似たような状態を経験しました。熊本スタイルという理想を掲げて、結果が出なくても貫いて、最終的に降格してしまった。南葛も“つなぐサッカー”と言葉にするのは簡単ですが、つなぐにはみんな細かなポジションを取らなければいけません。サポートのポジショニング、角度を作るためのポジショニング、それを状況に応じてどんどん変えていかないといけません。でも、それができていたかというと、まだ最終的に目指している理想までとは差があるな、と」
社会人サッカー1年目の青木が「今シーズンは試行錯誤の連続だった」と振り返るように、南葛SCも理想と現実、勝利と成長、その狭間で試行錯誤が続いた。個としてもチームとしても2019年は試行錯誤のシーズンだった。だから「難しいシーズンだった」のだ。(文中敬称略)
※第3回に続く。次回は11月12日に掲載予定。
取材・文●伊藤 亮
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