バックパス禁止のルール改正が追い風に。
90年代にボタフォゴなどでプレーし、引退後はGKコーチに転身、05年から15年までリオの名門フラメンゴで下部組織全体のGK育成コーディネーターを務めたヴァグネル・ミランダは、次のように指摘する。
「ブラジル南部にはヨーロッパ系の大柄で屈強な選手が多い。辛抱強くて冷静沈着さもあって、キーパーに向いている。ブラジル1部のレギュラーのおよそ半数は南部出身だ」
ちなみに、アリソンとエデルソンも南部の出身だ。ブラジル人GKの需要が高まった理由については、こう説明する。
「ブラジルでは、子供の頃にフットサルに励んで、フットボーラーとしての基本的な技術と判断力を磨いた後、本人の希望やクラブ側の勧めでキーパーを目指すケースが多い。そうした前提がまずあった。そこに追い風となったのが93年のルール改正だ。バックパスを手で処理することが禁止されたあの出来事以来、キーパーにも足下の技術が求められるようになり、ブラジル人の素養がさらに生きる時代が到来したというわけだ」
また、ブラジル特有の環境が成長を促す一因にもなっているという。
「ブラジルではシーズンオフが1か月程度しかなく、公式戦が非常に多い。強豪クラブは年に60~70の試合をこなす。実戦経験を積めるのはキーパーにとってきわめて重要で、それが成長を促す要因になっている」
そして、ミランダは誇らしげにこう締め括った。
「タファレル、ジダ、ロジェリオ・セニに憧れてキーパーを目指す子供が多くなり、近年のアリソン、エデルソンらの活躍によって欧州ビッグクラブでスターになれることが証明された。彼らの成功によってキーパーを目指す子供がさらに増え、全体的なレベルが一層向上する――。生まれているのは、そんな好循環だ」
「ブラジル南部にはヨーロッパ系の大柄で屈強な選手が多い。辛抱強くて冷静沈着さもあって、キーパーに向いている。ブラジル1部のレギュラーのおよそ半数は南部出身だ」
ちなみに、アリソンとエデルソンも南部の出身だ。ブラジル人GKの需要が高まった理由については、こう説明する。
「ブラジルでは、子供の頃にフットサルに励んで、フットボーラーとしての基本的な技術と判断力を磨いた後、本人の希望やクラブ側の勧めでキーパーを目指すケースが多い。そうした前提がまずあった。そこに追い風となったのが93年のルール改正だ。バックパスを手で処理することが禁止されたあの出来事以来、キーパーにも足下の技術が求められるようになり、ブラジル人の素養がさらに生きる時代が到来したというわけだ」
また、ブラジル特有の環境が成長を促す一因にもなっているという。
「ブラジルではシーズンオフが1か月程度しかなく、公式戦が非常に多い。強豪クラブは年に60~70の試合をこなす。実戦経験を積めるのはキーパーにとってきわめて重要で、それが成長を促す要因になっている」
そして、ミランダは誇らしげにこう締め括った。
「タファレル、ジダ、ロジェリオ・セニに憧れてキーパーを目指す子供が多くなり、近年のアリソン、エデルソンらの活躍によって欧州ビッグクラブでスターになれることが証明された。彼らの成功によってキーパーを目指す子供がさらに増え、全体的なレベルが一層向上する――。生まれているのは、そんな好循環だ」
現在、国内主要クラブの正GKのほとんどは20代後半から30代の中堅やベテランだ。実績を積んだレギュラーがいる場合、そのレギュラーが故障するかよほどのスランプに陥らない限り控えに出番は回ってこないため、若手がポジションを掴むのは容易ではない。
こうした状況のなか、23歳の若さですでに50試合以上に出場しているのが、ロジェリオ・セニを生んだサンパウロのジェアンである。ポジショニングに優れ、相手とのボディーコンタクトを怖がらず、前へ飛び出す勇気があり、足下の技術も高い。15年のU-20W杯では全8試合に出場してブラジルの準優勝に貢献。資質の高さは折り紙付きだ。
現在のブラジルU-20代表メンバーで、20年に開かれる東京五輪世代のウーゴ・ソウザ(フラメンゴ)は19歳。196㎝の長身で身体能力に優れ、ポジショニングも確かで、投げても蹴ってもフィードの精度が高い。セレソンのチッチ監督が「将来のセレソンの守備の中心となりうる逸材」と評価し、実際、「若手枠」として18年8月の強化試合に招集した。今シーズンにクラブで出場機会を与えられれば、さらなる成長が見込めるだろう。
優秀な人材が育まれる環境とブラジル人の素養。大国は今後も、優れたGKを輩出しつづけるはずだ。
文●沢田啓明
※『ワールドサッカーダイジェスト』2019年4月4日号より転載