【現地発】バルサの歴史的奇跡、その時カンプ・ノウは――

カテゴリ:メガクラブ

工藤拓

2017年03月10日

様々な要素が重なって生まれた「奇跡」。

95分にS・ロベルトが起死回生のゴール。カンプ・ノウは歓喜に包まれた(C)SOCCER DIGEST

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 だが90分、レフェリーがこの日2本目のPKを示した瞬間に、会場の空気は一変した。細かなステップの助走から放ったネイマールのキックがゴールネットを揺らすと同時に、死にかけていたスタンドが息を吹き返したのだ。
 
 ロスタイムは5分。この日で二度目の「シー、セ、プエデ!」が響き渡る中、ピケが前線へと上がっていく。さらにテア・シュテーゲンもセットプレーのたびに敵陣に足を踏み入れた。
 
 残り30秒。フリーキックのクリアボールを拾ったネイマールがDFをワンフェイクでかわし、左足で柔らかいロブパスをゴール前へ送る。走りこんだのは途中出場のS・ロベルト。身体を投げ出し、右足の外側で押し込んだボールがゴールネットに吸い込まれた瞬間、奇跡は現実のものとなった。
 
 決して「勝つべくして勝った」と言える試合ではなかった。
 
 一方的に押し込み続けたとはいえ、流れの中から作り出した決定機はわずかしかない。1、2点目は相手DFの対応の遅れ、つまりはミスを突いたものだったし、2つのPKはいずれも見逃されても不思議ではないものだった。
 
【バルサ対パリSG】CL史上に残る「奇跡の大逆転劇」を写真で振り返る!
 
 逆にパリSGは少なくとも3度の決定機を手にし、そのうち1つはマスチェラーノ本人が「あれはファウル」と認めた幻のPKによって阻まれている。
 
 それでも、いやだからこそ、バルサの逆転劇は「奇跡」としか言いようがない、様々な要素が重なって生まれたものだった。
 
 そんな試合、滅多に巡り会えるものではない。この日、カンプ・ノウに足を運んだ幸運な人々は、自分が「奇跡の目撃者」であることを末代まで語り継ぐことだろう。
 
文:工藤拓
 
【著者プロフィール】
1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴りはじめ、TVで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、W杯ドイツ大会の現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。
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