とはいえ、そのナポリも３位の座が安泰というわけではまったくない。シモーネ・インザーギ、ヴィンチェンツォ・モンテッラという現役時代にFWとして鳴らした若い指揮官に率いられたラツィオ、ミラン、そしてとりわけ、ステーファノ・ピオーリ新監督の下でやっとチームとしての形が見えてきたインテルには、戦力的にもチームとしての完成度という点でも、最後まで３位争いに絡むだけの力があるように見えるからだ。
 
　ラツィオを率いるインザーギは、前監督ピオーリが築いたチームの土台を受け継ぎつつ、そこに新しい血をうまく組み込んでトランジション志向のダイナミックなチームを築き上げた。
 
　引いて相手を待たず中盤から積極的に「迎撃」するアグレッシブな守備でボールを奪うと、人とボールを縦に走らせ一気にフィニッシュを狙うスタイルは、常に裏を狙う動きを最大の武器とする新CFチーロ・インモービレにジャストフィット。ドルトムントとセビージャで燻った３年前のセリエA得点王が輝きを取り戻し、ケイタ・バルデ・ディアオ、フェリペ・アンデルソンという高速ドリブラーとの３トップでチームを牽引している。
 
　ピッチ外では中国資本への経営権売却がなかなか決まらず、補強予算がまったく捻出できないなど不安定なペンディング状態が続いているミランだが、ピッチ上では新監督のモンテッラが、シルビオ・ベルルスコーニ名誉会長の現場介入に怯まず、自らの構想通りにチームを構築して、期待以上の結果を残している。
 
　補強予算が捻出できなかったため、苦肉の策として生え抜きの若手（ジャンルイジ・ドンナルンマ、マヌエル・ロカテッリ）やレンタル戻り（スソ）の既存戦力を最大限に活用して作り上げたチームは、レギュラークラスの過半数がイタリア人、U-23の若手が５人というフレッシュでローカライズされた顔触れ。中でも、18歳とは思えない落ち着いたゲームメイクと機を見た攻め上がりで、故障離脱した主将リッカルド・モントリーボの穴を埋めている下部組織出身の逸材ロカテッリの活躍は特筆ものだ。
 
　開幕２週間前にロベルト・マンチーニを解任し、イタリア・サッカーにまったく通じていないフランク・デブールを後任に招聘するという「暴挙」に出たインテルは、３か月後にはそのツケを払う形でデブールを解任し、昨シーズン終盤までラツィオを率いていたピオーリに指揮権を託した。
 
　そのピオーリは、ポゼッションでチーム全体を押し上げて主導権を握るデブール時代のスタイルから、奪ったボールを縦へ縦へと運んで一気にフィニッシュまで持っていくサッカーへと大きく転換。システムも４-３-３から、最終ラインの前にジョフレー・コンドグビア、マルセロ・ブロゾビッチという運動量と攻撃力を備えたMFを並べた４-２-３-１にシフトした。
 
　アントニオ・カンドレーバ、マウロ・イカルディ、イバン・ペリシッチという縦の推進力を備えたアタッカー陣に素早くボールを送り届けると同時に、それを後方からサポートする体制を整えた格好だ。
 
　最初の３試合は６得点・７失点と不安定な戦いぶりだったが、チームが固まるに連れてディフェンスが安定し、直近３試合は６得点・０失点で３連勝。どうにか新体制が軌道に乗ってきた感がある。もともと戦力的にはローマ、ナポリを上回るレベルにあるだけに、チームの完成度が高まってくればチャンピオンズ・リーグ出場権（セリエA３位以内）争いに絡んでくる可能性は高い。