ユーベがチームの完成度という点でまだ大きな「伸びしろ」を残していることを考えると、後半戦は２位以下に対してリードを広げる可能性が高い。追う立場にあるローマ、ナポリがユーベの６連覇を阻むためには、後半戦で取りこぼしをゼロにするだけでなく、ユーベを直接対決で叩くことが必要だろう。そして、それは決して簡単ではない。
 
　ローマは開幕６試合で早くも２敗と立ち上がりはやや不安定だったものの、10月以降はコンスタントに勝点を積み上げて２位の座を固めた。昨シーズンは期待を裏切った入団２年目のエディン・ゼコが、得点王ランキングで首位を争う13ゴールを決める活躍でチームを引っ張っている。
 
　２年目のルチアーノ・スパレッティ監督は開幕当初、昨シーズン後半の基本形だったディエゴ・ペロッティを「偽９番」に置く４-３-３を採用したが、４節以降は前線の基準点としてゼコをCFに据え、両翼に爆発的なスピードを持つモハメド・サラーと戦術センスに溢れる技巧派のペロッティ、そしてトップ下には運動量とアグレッシブネスを備えた武闘派MFのラジャ・ナインゴランを置くという、やや意外な組み合わせの４-２-３-１でチームを固定した。
 
　当初はフィオレンティーナ、トリノに黒星を喫するなど前途多難にも見えたが、忍耐強く連携のすり合わせを続ける中でチームが噛み合い、10月以降はインテル、ナポリに連勝したのを皮切りに、着実に完成度を高めている。
 
　前半戦最大の山場となったユーベとの直接対決では、ポゼッションで主導権を握って互角に試合を進めたものの、イグアインの個人技で決勝ゴールを奪われて痛恨の敗戦。もし勝っていれば１ポイント差まで迫っていたところを、逆に実質７ポイント差に突き放される結果となった（ユーベはイタリア・スーパーカップのため18節終了現在で１試合未消化）。
 
　年明けは、ここまで８ゴール・５アシストとゼコに次ぐ活躍を見せてきたサラーが、アフリカ・ネーションズカップ出場のため１月の３～４試合を欠場することが当面の不安材料。ここを乗り切って首位との勝点差を射程距離内に保ち、ユーベの取りこぼしを待って追い上げていく忍耐強い戦いが必要になる。
 
　３位ナポリはイグアインの後釜として獲得したアルカディウシュ・ミリクが、開幕から順調な活躍を見せていたにもかかわらず10月の代表戦で負傷し、来年２月初めまでの長期離脱を強いられたことが最大の誤算だった。
 
　マウリツィオ・サッリ監督は当初、大型FWマノーロ・ガッビアディーニを後釜に据えたが、ゴールに背を向けてのポストプレーが得意ではなく、組織的なメカニズムの中で機能するよりも単独でゴールに向かうメンタリティーが強いこのイタリア人FWはCFとして戦術的に機能せず、「実験」はわずか２試合で頓挫。その後は169cmの小兵ドリース・メルテンスをCFに据えるという苦肉の策でここまで戦い続けている。
 
　そのメルテンスのプレーが戦術メカニズムに馴染み始めて以降、11月以降の７試合は無敗（４勝３分け）、とりわけ12月の４試合は16ゴール（１試合平均で４ゴール）という爆発的な得点力を見せており、チームは勢いに乗り始めている。
 
　メルテンスに加え、中盤でも縦の推進力と高いテクニックを備えたピオトル・ジエリンスキ、高いボール奪取力とシンプルかつ効果的な散らしを武器とする19歳の守備的MFアマドゥ・ディアワラと、若手がレギュラーに定着して戦力に厚みとクオリティーをもたらしていることも好材料だ。
 
　１～２月は21節（１月21日）のミラン戦を除くと格下との対戦が続くため、ここで取りこぼしなく勝ち点を積み上げてローマ、そしてユーベを脅かしたいところだ。