なかでも素晴らしかったのは、GKの西川だ。83分、86分と立て続けに好セーブでピンチを凌ぎ、文字どおり完封勝利の立役者となった。
また身体を張ったという意味では、終盤の長谷部のブロックも称賛に値した。空中戦で相手に競り勝っていた吉田と森重の両CBも、エリア内でのディフェンスについては悪い出来ではなかった。
しかし、一度ならず危険な位置からシュートを打たれた点で、最終ラインがバタついた印象もある。吉田もミックスゾーンでは次のように反省していた。
「後半に関しては評価できる部分は少ないですね、無失点で抑えたところだけじゃないかなと思います。ラインコントロールにしても、リスクマネジメントにしても、カウンターに対する守備にしても、あまりに雑な部分が多かったし、僕も含めてイージーなミスが多かった。
ボランチやSBをコントロールしながら、もっとリスクを減らしていかないと、レベルが高くなる最終予選ではチャンスを作られたら失点してしまう。そこは今日まったくできなかったので、満足できていません」
リスクマネジメントの部分で、日本が課題を残したのは確かだ。吉田は続ける。
「なるべくハセさん(長谷部)は上がりすぎないようにと、SBも(酒井)高徳とかにも抑えて抑えてと言っていたんですけど、結局最後に大きいチャンスを何度も作られて、相手が撥ね返したボールがさぼっていた選手のところに入って、ひたすらカウンターを受ける崩しい時間帯が続いた。ああいうのは避けなきゃいけないですね」
この日の日本は守備の局面で、シリアの拙いプレーに助けられたシーンが多々あった。シリアの選手が勝手に自滅して、日本ボールになる。そうした“ラッキー”が数え切れないほどあったのだ。
日本が守り切ったというよりは、シリアのプレー精度が低かったから無失点で乗り切れたとの見方もできるわけで、ディフェンディングサードについては少なからず課題が浮き彫りになった一戦だった。
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)