ミランでは“本当のこと”を言ってはいけない…。
「俺たちも最初は、本田を穿った目で見ていた。どうせガッリアーニ(ミランの副会長で強化担当者)が、金儲けのために連れてきたんだろうと思っていたわけさ。それに、あまり喋らないだろ? 海のものとも山のものとも分からない胡散臭い野郎だと思っていた。しかし、本田の常に全力を尽くす姿を見て、だんだんと考えが変わってきた。俺たちはミランに敬意を持たない奴は大嫌いだが、本田のように自分のためでなくチームのために頑張る選手は好きなのさ。もし本田のような真摯な態度で練習や試合に臨む選手が11人いたら、ミランに蔓延るすべての問題が解決するかもしれない……。ただ、本田は良い選手だが、超一流ではない。チームの全てを変えうる実力と影響力を備えたフォーリクラッセ(規格外の選手)ではないんだ。それは確かだな」
とてもバランスの取れた、的を射た分析だろう。そして、なにより興味深かったのが、例の爆弾発言に関する彼らの評価だ。
「いま本田は、ほとんど出場機会を与えられていない。例の発言のツケを払わされているんだと思う(この部分に関しては私と意見が異なる)。たしかに、あれはチームにとってはかなりきつい内容だった。でも、俺たちウルトラスはとても勇敢な発言だったと思っている。自分の立場も顧みず、あんなことを言った選手はミランで前代未聞だ。まさに俺たちの気持ちを代弁してくれた。本田の言ったことはすべて真実だ。しかし問題は、ミランでは“本当のこと”を言ってはいけないということだ」
これが、ミランのウルトラスを支配する考えである。彼らは何か異常を感じれば、恐れずに意見をクラブにぶつけてくる。そう、まるで先日の本田のように。
だからミランのウルトラスは、懲罰を恐れずにチームに直言した本田に拍手を送ったのである。
もちろん、爆弾発言のミラニスタに関する件も彼らは知っている。「ファンたちも、やはり気づいていかないと。拍手のタイミングなどを見てても、勝つことだけに左右されているなというのはすごい感じるんで。内容など見ないし、勝てば拍手する」という部分だ。
それに関しては、反論もあることだろう。しかしそれ以上に、彼らは本田の勇気ある行動に感銘を受けたのである。禁断のチーム方針にあえて切り込んだという事実の前には、すべてが二の次なのだ。今では本田はある意味で、クルバ・スッドの英雄となっている。
しかし、ではなぜサン・シーロで本田はブーイングを浴びるのか?
「あれは本田だけに向けられたものではない」
ルカはそう断言する一方、こう続けた。
「しかし、選手が栄光あるロッソネーロのユニホームに値しないプレーをした時には、もちろんブーイングが起こる。それはごく当たり前のことだ」
ミランの選手に値しないパフォーマンスだからブーイングをする――。こちらもまた、正論だろう。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。
とてもバランスの取れた、的を射た分析だろう。そして、なにより興味深かったのが、例の爆弾発言に関する彼らの評価だ。
「いま本田は、ほとんど出場機会を与えられていない。例の発言のツケを払わされているんだと思う(この部分に関しては私と意見が異なる)。たしかに、あれはチームにとってはかなりきつい内容だった。でも、俺たちウルトラスはとても勇敢な発言だったと思っている。自分の立場も顧みず、あんなことを言った選手はミランで前代未聞だ。まさに俺たちの気持ちを代弁してくれた。本田の言ったことはすべて真実だ。しかし問題は、ミランでは“本当のこと”を言ってはいけないということだ」
これが、ミランのウルトラスを支配する考えである。彼らは何か異常を感じれば、恐れずに意見をクラブにぶつけてくる。そう、まるで先日の本田のように。
だからミランのウルトラスは、懲罰を恐れずにチームに直言した本田に拍手を送ったのである。
もちろん、爆弾発言のミラニスタに関する件も彼らは知っている。「ファンたちも、やはり気づいていかないと。拍手のタイミングなどを見てても、勝つことだけに左右されているなというのはすごい感じるんで。内容など見ないし、勝てば拍手する」という部分だ。
それに関しては、反論もあることだろう。しかしそれ以上に、彼らは本田の勇気ある行動に感銘を受けたのである。禁断のチーム方針にあえて切り込んだという事実の前には、すべてが二の次なのだ。今では本田はある意味で、クルバ・スッドの英雄となっている。
しかし、ではなぜサン・シーロで本田はブーイングを浴びるのか?
「あれは本田だけに向けられたものではない」
ルカはそう断言する一方、こう続けた。
「しかし、選手が栄光あるロッソネーロのユニホームに値しないプレーをした時には、もちろんブーイングが起こる。それはごく当たり前のことだ」
ミランの選手に値しないパフォーマンスだからブーイングをする――。こちらもまた、正論だろう。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。