数多の日本代表戦士を育てた80歳・名伯楽は、なぜ母校の浦和高校に舞い戻ったのか

カテゴリ:高校・ユース・その他

河野 正

2021年10月04日

ここまで7か月間の指導でチームの変化を実感

JFA田嶋会長(右)ら松本氏の教え子には錚々たる顔ぶれが並ぶ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 研究と学習に明け暮れた足跡こそ、松本さんの自分史でもある。

 日本協会が初めて開催したコーチングスクールや日本サッカー界初の外国人コーチ、デットマール・クラマー氏が専任コーチとなった国際サッカー連盟主催のアジア・コーチングスクールに参加。西ドイツを拠点にした6か月間の研修では、ボルシア・メンヘングラッドバッハのヘネス・バイスバイラー監督が主任講師を務めたフットボール教師養成講座を受講し、イングランドでも指導者コースで多くを学んだ。いずれも70年代初頭のことだ。

 母校に昨年末赴き、今年の1、2月はコロナ禍で練習を自粛したが、ここまで週2日の指導を7か月間実施してきた。4月に習熟度などをテストすると望外の好結果を得た。「私がまとめた指導論を読んでから参加しているので、要点を抑えた練習になります。私のやり方に興味を持ち始めてからは、スポンジが水を吸収するように自分たちのものにしていきました」と一定の成果を喜ぶ。

 実感するのは選手自身だ。主将のMF狩野拓夢は「試合の得点シーンなどを振り返ると、練習でやっていたことが多いんです。パスで展開する戦術や技術面が向上し、松本先生から学んでいることの正しさを感じる」と、チームの変化に驚いていた。
 
 良い指導者の輩出、というもうひとつの大義はどうか。OBでもある就任5年目の本田哲也監督は「サッカーの原理原則を体系的にまとめ、頭の中で構築されている。これをきちんと伝えられる指導者を目ざして学ばせていただいています。勉強になることが多い」と感謝する。

 高校からサッカーを始めた松本さんは、ここで生涯の恩師である福原黎三監督に出会ったことで人生が決まり、サッカー界で従事することになる。「60数年たったいまでも、“サッカーで哲学しろ”という言葉が鮮烈です。グラウンドに入ったらすべてを忘れ、無になることを教えていただいた」と言って涙腺を緩ませた。

 福原監督は現役の日本代表FWとして56年に着任。竹腰重丸監督時代、後にそろって日本協会会長となる長沼健、岡野俊一郎ともプレーした。犬飼元会長も教え子で、浦和レッズの社長時代「多感な年ごろに受けた影響は計り知れない。サッカーマンとして、人として、男としての生き方を学んだ」と述懐している。

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