アカデミー育ちの選手に目を向けると、齊藤未月が湘南史上初めて国内の他クラブを経由しない欧州行きを果たし、その齊藤と同期昇格を果たした石原広教が今季よりキャプテンとなった。今年、U-18からトップ昇格した田中聡もすでにチームの中心で、齊藤に続いて欧州行きが期待される選手でもある。来季は190cmの長身DF石井大生と天性の攻撃センスを持つ原直生の２人がU-18から昇格することが決まっており、その下の年代にも世代別代表に名を連ねる選手が控えている。
 

　近年の湘南はこのように継続的に“自前”のタレントを輩出しているのだが、それはクラブの実直な取り組みが花開いた形でもある。
 
「うちの良さをそのまま体現してプレーしている選手というイメージがありますし、内部の選手にも刺激になっている。デュエル勝率でナンバーワンをあのドイツで取ったというところもそう。そこはベルマーレとして一番大事にしているところなので、浮嶋（敏）さんはじめクラブとして育成に関わった方々が作ってきた湘南スタイルのひとつの結果でもある」

　小原氏が言及するのは言うまでもなく、遠藤航のことだ。彼が生まれた経緯とクラブの土壌についても、続けて語る。

「求めているサッカーはハードワークがベースにあります。菅野将晃さん（2006年～2008年まで指揮）を起点に反町康治さん（2009年～2011年まで指揮）が受け継いでボールホルダーを追い越し、人数を掛けて攻めきる攻撃的な要素を取り入れる。そして、曺さん（曺貴裁・現京都サンガ監督 2012年～2019年途中まで指揮 ）になって、攻守一体でアグレッシブなNON STOP FOOTBALL、いわゆる湘南スタイルが明確になりました。そして浮嶋さんが率いて湘南スタイルの進化に取り組んでいる今に受け継がれていると。湘南スタイルというのは、ヨーロッパのサッカーに基準を合わせ、常にゴールを意識した縦に鋭いサッカーを標榜しており、ボール奪取にもこだわってきた。球際・インテンシティ・フルスプリントなどトレーニングから常に100％の力を出し切ることを求めている中で出てきた選手という印象です」