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【消えた逸材】18歳でバルセロナへ…この移籍が“クロアチアの神童”のキャリアを暗転させた

カテゴリ:連載・コラム

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2021年06月30日

わがままな悪童という負のイメージが定着

2020-21シーズンはイングランド2部のバーミンガムでプレー。(C)Getty Images

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 メディアにも踊らされた。過剰な報道でファンの期待を煽り、16歳は無用なプレッシャーに晒された。なかでも過熱したのがクロアチア代表招集の待望論で、父の血筋であるボスニア・ヘルツェゴビナに取られる前に囲い込むべきだとメディアが声高に訴えた。その急先鋒が重鎮記者のトミスラフ・ジダクで、『スポルツケ・ノボスティ』紙にこんな見出しが躍った。

「イゴールよ、ハリロビッチを呼べ。ボスニアに盗られる前に」

 イゴールとは、当時のクロアチア代表監督のイゴール・スティマッチだ。ジダクは記事にこう書いた。

「イゴール、ボスニア・ヘルツェゴビナのサッカー協会を見くびってはいけない。イビチャ・オシム(編集部・注/同国協会は当時、運営上の問題でFIFAとUEFAから資格停止処分を受け、オシムは正常化委員会の会長として事実上の協会トップだった)はこう主張しているのだ。“ボスニアの血を引くこの若者を我が代表にするため、あらゆる手段を尽くすべきだ”と。彼を失うことは神に背くような大罪だ。その才能がまだ信じられないというのなら、NKザダル(現HNKザダル)戦で奪ったゴールを見るべきだ。ズラタンやメッシ級のマスターピースだったではないか」

 この記事が出てから7か月後の2013年6月、クロアチア代表にデビュー。16歳356日での初キャップは同国の史上最年少記録だった。

 しかし、持ち上げるだけ持ち上げて、さっと手のひらを返すのがメディアだ。U-17代表として出場した2013年秋のU-17ワールドカップが早期敗退に終わると、ハリロビッチは戦犯として叩かれた。大会中から批判を浴び、腹に据えかねていたのだろう。

 ウズベキスタンとのグループ最終戦だった。一旦は同点となるゴールを決めると、中継カメラに駆け寄り、人差し指を口に当てた。「黙れ!」というメディアへの意趣返しだった。これがいけなかった。感情に任せた幼稚な振る舞いで、わがままな悪童という負のイメージが定着してしまった。

 ヘーレンフェーンに加入した2019年9月、23歳のハリロビッチはこう語った。

「浮き沈みがあったのは事実だ。でも、僕にはまだ確かな感触があるんだ。ルカ・モドリッチになれるんだっていう感触が」

 それから2年が経った。ハリロビッチはモドリッチにはなれていないし、この先もなれないだろう。それこそ、奇跡でも起きないかぎり……。

文●ウラジミール・ノバク
訳●松野敏史

※『ワールドサッカーダイジェスト』2021年6月17日号より転載
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