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【消えた逸材】メッシらと北京五輪を制した“リケルメの再来”。交通事故を境に暗転した小兵FWのキャリア

カテゴリ:連載・コラム

ワールドサッカーダイジェスト編集部

2021年05月30日

みずから運転していた車が大木に衝突

161センチと小柄ながら圧巻のテクニックでリーベル攻撃陣をリードしたブオナノッテ。(C)Getty Images

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ディエゴ・ブオナノッテ(FW/アルゼンチン国籍)
■生年月日/1988年4月19日
■身長・体重/161cm・55kg


 いまから約13年前、アルゼンチン・リーグでは身長160センチに達するかどうかの小兵アタッカーが一世を風靡していた。

“エナノ”(小人)の愛称で親しまれたその天才の名はディエゴ・ブオナノッテ。18歳の誕生日を迎える直前の2006年4月9日に名門リーベル・プレートでデビューすると、サイズのなさをものともしないテクニックと瞬発力に加え、高い得点力も発揮し、2年目には攻撃の中心選手に君臨するまでになった。

 07―08シーズンの後期リーグ制覇に貢献すると、直後に開催された北京五輪ではリオネル・メッシやセルヒオ・アグエロらとともに金メダルを獲得。主にトップ下でプレーし、得点力もあったことから「リケルメの再来」と呼ばれた若者には、前途洋々たる未来が約束されているはずだった。
 
 しかし、すでにヨーロッパのいくつかのクラブからアプローチを受け、まさに大西洋を渡るタイミングをうかがっていた09年12月、大きな悲劇がブオナノッテを襲った。みずから運転していた車が大木に衝突。鎖骨と右肩を骨折するとともに、肺を損傷するという大怪我を負ったのだ。しかも同乗していた幼馴染の友人3人が命を失うという痛ましい事故で、ブオナノッテ自身もしばらくは予断の許さない状態が続いた。

 唯一シートベルトをしていたブオナノッテは一命を取り止め、約4か月後にピッチに復帰した。しかし、かつてのキレのあるプレーは戻らなかった。それはデビューからの3年間で20得点以上を叩き出していたのが、交通事故のあと、同等の数字を記録するのに6年半を要したことでも明らかだ。

 ピッチ外でも周囲に対してふさぎ込みがちになり、もともとシャイだった性格にさらに拍車がかかった。リーベルでの完全復活をめざしたが、当時の監督、フアン・ホセ・ロペスとの確執も重なり、出場機会に恵まれない状況が続いたブオナノッテは、23歳でヨーロッパ挑戦の決意を固める。
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