不気味に映ったウズベキスタンの振る舞いと、アジア勢の「罠」。
ウズベキスタン戦のピッチ上では、ハリルホジッチ監督の手によって様々な”実験”が繰り返された。
徹底された縦への速い攻撃と、展開に応じてハイプレスと後方でのブロック守備を使い分ける手法は、今後のチームの基盤となるのだろう。そして、中盤の守備強化を狙ったDF水本裕貴のボランチ起用など、戦術の幅を広げるトライも続けられるはずだ。
しかし、こうした刺激に満ちた”実験”の数々を、チーム力へと昇華させるためには、やはり時間がかかる。今回の会見でも、指揮官自身が「我々はなにかを成し遂げたわけではない。だから焚きつけないでほしい」と予防線を張っていたが、その表情は『今回の親善試合は上手くいったが、チーム作りがスムーズにいくはずがない』と暗に言っているようだった。
監督が代わり、やり方が変わる――継続性という部分で、現在の日本代表がアジアのライバル国に対してビハインドを負っているのは明らかだ。
この日対戦したウズベキスタン代表も、2009~2010年、そして2012年から現在に至るまで指揮を執るミルジャラル・カシモフ監督の下、大いなる野心を持って強化に取り組んでいる印象を受けた。大敗したとはいえ、中盤のキーマンであるオディル・アフメドフ、不動の左SBヴィタリー・デニソフら主力を欠いており、進境著しい若手も五輪予選で不在と、日本に比べて多くのエクスキューズがあった。
むしろ、レギュラークラスであるCBのふたりと2ボランチの4人を85分まで一緒にプレーさせ、ビルドアップ時にボランチのアジズベク・ハイダロフを最終ラインに落として両SBを前に押し出す形や、守備時に日本のシステムに合わせて4-1-4-1に移行するなど、組織としての完成度を高めようとする取り組みが、むしろ不気味に感じた。
「ウズベキスタンは本当に良いチームで、我々に多くの問題を生じさせた。ハーフタイムには選手にオーガナイズ、そしてブロックを保ち、カウンターを狙って2点目、3点目を狙っていこうと伝えました」(ハリルホジッチ監督)
指揮官の言葉を借りれば、相手の出方に応じて「罠を仕掛けた」後半の日本は、最終的に5-1という申し分のない成果を勝ち取った。だが、ワールドカップ予選という舞台で相対するアジア勢は、この日のウズベキスタンが演じたような能動的なサッカーはやってこない。
なによりウズベキスタンのような、水準以上の技術もフィジカルも組織力も兼ね備えた曲者こそ、本番では日本に対して「罠」を仕掛けてくる(彼らと2次予選で当たる可能性は低いが)。
自陣に引いてスペースを消しながら、虎視眈々と日本の隙を突いてくるアジア勢に対し、ハリルホジッチ監督はどのような策を講じるのか。戦略家として多様な引き出しを持つことを証明した指揮官だからこそ、4月14日のワールドカップ予選組分け決定後の言動と采配から目が離せない。
取材・文:谷沢直也(サッカーダイジェスト編集長)
徹底された縦への速い攻撃と、展開に応じてハイプレスと後方でのブロック守備を使い分ける手法は、今後のチームの基盤となるのだろう。そして、中盤の守備強化を狙ったDF水本裕貴のボランチ起用など、戦術の幅を広げるトライも続けられるはずだ。
しかし、こうした刺激に満ちた”実験”の数々を、チーム力へと昇華させるためには、やはり時間がかかる。今回の会見でも、指揮官自身が「我々はなにかを成し遂げたわけではない。だから焚きつけないでほしい」と予防線を張っていたが、その表情は『今回の親善試合は上手くいったが、チーム作りがスムーズにいくはずがない』と暗に言っているようだった。
監督が代わり、やり方が変わる――継続性という部分で、現在の日本代表がアジアのライバル国に対してビハインドを負っているのは明らかだ。
この日対戦したウズベキスタン代表も、2009~2010年、そして2012年から現在に至るまで指揮を執るミルジャラル・カシモフ監督の下、大いなる野心を持って強化に取り組んでいる印象を受けた。大敗したとはいえ、中盤のキーマンであるオディル・アフメドフ、不動の左SBヴィタリー・デニソフら主力を欠いており、進境著しい若手も五輪予選で不在と、日本に比べて多くのエクスキューズがあった。
むしろ、レギュラークラスであるCBのふたりと2ボランチの4人を85分まで一緒にプレーさせ、ビルドアップ時にボランチのアジズベク・ハイダロフを最終ラインに落として両SBを前に押し出す形や、守備時に日本のシステムに合わせて4-1-4-1に移行するなど、組織としての完成度を高めようとする取り組みが、むしろ不気味に感じた。
「ウズベキスタンは本当に良いチームで、我々に多くの問題を生じさせた。ハーフタイムには選手にオーガナイズ、そしてブロックを保ち、カウンターを狙って2点目、3点目を狙っていこうと伝えました」(ハリルホジッチ監督)
指揮官の言葉を借りれば、相手の出方に応じて「罠を仕掛けた」後半の日本は、最終的に5-1という申し分のない成果を勝ち取った。だが、ワールドカップ予選という舞台で相対するアジア勢は、この日のウズベキスタンが演じたような能動的なサッカーはやってこない。
なによりウズベキスタンのような、水準以上の技術もフィジカルも組織力も兼ね備えた曲者こそ、本番では日本に対して「罠」を仕掛けてくる(彼らと2次予選で当たる可能性は低いが)。
自陣に引いてスペースを消しながら、虎視眈々と日本の隙を突いてくるアジア勢に対し、ハリルホジッチ監督はどのような策を講じるのか。戦略家として多様な引き出しを持つことを証明した指揮官だからこそ、4月14日のワールドカップ予選組分け決定後の言動と采配から目が離せない。
取材・文:谷沢直也(サッカーダイジェスト編集長)