アジアカップ2015

【識者のUAE戦考察】5つの視点で論じるアギーレ采配

カテゴリ:日本代表

西部謙司

2015年01月24日

シンプルにゲームを作った柴崎の起用は当たりだった。

シンプルにパスを散らして自ら前方のスペースへ飛び込む。柴崎が見せた積極性がチームの攻撃に変化を与えた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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POINT 3 : 遠藤→柴崎の交代による攻撃の変化
 
  遠藤の交代は運動量を考慮してのものだと思うが、柴崎の起用は当たりだった。同点ゴールを決めただけでなく、遠藤よりも上手く攻撃の流れを作れていた。
 
 遠藤は相手のボランチの背後にポジションを取り、そこで速いクサビを受けようとしていた。そこで受ければ相手のDFが遠藤に釣られるので、順番に相手のポジションを動かすことになり、スペースができるからだ。ゾーンディフェンスを崩すには最も効果的なやり方である。
 
 ところが、遠藤がそのポジションに入った時は気配を消すように止まっているので、味方が発見できなかったり、気づいても速いパスを躊躇することもあり、結果的に遠藤のアイデアはさほど奏功する場面がなかった。
 
 柴崎は味方のサポートと、その後の前方へのランというシンプルな形でゲームを作っている。動いている選手は味方の目に入りやすく、柴崎のほうが上手く流れに乗れていた。後半にUAEの運動量がガタ落ちしたせいもあり、柴崎はのびのびとプレーできていて、この交代は効果的だった。
 
POINT 4 : 豊田投入の意図をチームとして理解していたのか?
 
 3人目の交代は岡崎から豊田だった。岡崎の負傷による交代のようだが、そうでなくても豊田の投入はあって然るべきだった。ただ豊田を入れた意味を、チームメイトが理解していたかどうかは疑わしい。
 
 前半、日本はチャンスを数多く作っていたが、ほとんどはサイドからのクロスだった。乾がフリーでヘディングした場面のほかは、相手もそれなりにマークしていて決定的と言えるほど崩してはいない。
 
 残り45分で、UAEが守備に専念している状況で、パスワークで崩すにはあまりスペースがなく、手間取れば時間もどんどん過ぎてしまう。その代わり、中盤は完全に支配できているのだから、一度サイドを変えるだけでSBからクロスボールを入れられる状況は簡単に作れる。豊田投入は、「ハイクロスを狙え」という攻撃方法の変更にほかならない。
 
 65分間やってノーゴールなら、状況的にもこのやり方ではダメだと判断するのはむしろ普通だろう。しかし豊田が入った後も、日本はさほどハイクロスを多用することはなかった。豊田を入れて放り込まないなら、乾を残して岡崎の代わりに武藤で良かったのではないか。
 
 その後UAEは長身のDFを投入して、豊田のマークに充てている。ある意味、相手のほうが状況をよく読めていた。
 
 アギーレ監督の良さは状況に合わせた論理性にある。ごく普通の、手堅い考え方をする指揮官。ただ、選手のほうがそこまで切り替えられていない。
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