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「戦術は何も生み出さない」指揮官ジダンはいかにしてマドリーを立て直したのか【現地発コラム】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2020年03月06日

窮地に立たされてもその基本的な立ち位置を忘れなかった

 このジダンのチームあっての選手という考え方は、マドリーの歴史そのものでもある。しかし同時に17人から18人の選手を個性に応じて的確に使い分けるのが監督の責務でもある。

 例えば、同じ選手であっても起用するポジションによってその働きと周囲にもたらす化学反応は大きく変わる。フェデリコ・バルベルデは持ち前のダイナミズムを発揮できる四方に広がるスペースを享受してこそ、本来の重戦車のようなプレーを披露する。つまり彼をピボーテ(ボランチ)で起用するには、ふたつの要素を鑑みる必要が出てくる。ひとつはバルベルデがいつものプレーを見せれば、ピボーテとしての機能性が低下すること。そしてもうひとつは彼がその任務を全うすれば、バルベルデの良さが半減してしまうことだ。

 選手は然るべき役割を与えてこそ輝きを見せる。だからこそジダンは、中盤のバランスを保持するためにカゼミーロをピボーテとして起用し続けているのだ。
 
 結果的にチームを復活に導いたジダンであるが、当初はその手腕に疑いの目が向けられていた。それは監督としての真価を問われるかつてない大きな試練であった。しかしジダンはトレードマークでもある笑顔を絶やすことなく卓越したコミュニケーションスキルを発揮し続けながら、選手たちとの信頼関係を深めることで見事に難局を乗り切った。

 フットボールがいかに進化しようと、最後に監督の命運を決めるのは選手たちのパフォーマンスである。ジダンは窮地に立たされてもその基本的な立ち位置を忘れなかった。戦術を簡略化させて解決策を探し当て、選手たちに安心感と信頼を与えると、あとはその成果を辛抱強く待ち続けた。

 マドリーのような強豪チームにクリシス(危機)が勃発すると、決まり文句のように「変革」というフレーズがメディアを駆け巡る。実際、昨シーズンから今シーズン序盤にかけてクラブの周辺には大刷新を要求する声が絶えなかった。しかしマドリーの革命家は静観することでも問題の解決を図ることができることを実証した。そしてそうした芸当ができるのが究極の“ノーマル・ワン”、ジダンのジダンたる所以でもあるのだ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。
 
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