「戦術は何も生み出さない」指揮官ジダンはいかにしてマドリーを立て直したのか【現地発コラム】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2020年03月06日

マドリーの天敵グアルディオラを「世界最高の監督」と…

見事にチームを立て直したジダン。先のクラシコでバルサを破り、マドリーは首位に浮上した。(C) Getty Images

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 ジネディーヌ・ジダンは一見するとごく普通のジェントルマンだ。物腰が柔らかく、話し方は穏やかで、自らを正当化して虚勢を張るようなことはない。しかし見かけに騙されてはいけない。ジダンはそうした振る舞いを世間で形作られた自らの人物像が善悪を超越した領域に達していることを承知のうえで意識的に行なっている部分があるからだ。

 権力を誇示する方法はいくらでもあるが、そのやり方がまたジダン流である。12月のクラシコのでは、判定に対してマドリディスモの間で不満が爆発している中で部外者のような発言に終始し、記者会見という公の場でマドリーの天敵、ジョゼップ・グアルディオラを世界最高の監督と礼賛した。

 その姿からは昨今のフットボールに蔓延しているポレミカ(論争)を好物にする輩とは一線を画し、マドリーの伝統であるリスペクトの精神を大切にしようという強い意志が感じられる。

 ジダンが偉大なのは、そうしたマドリディスモの鼓動、あるいはクラブの方針とは必ずしも一致しない言動をしても無傷でいられるところだ。クラブを代表する立場でありながら、無意味なポレミカに巻き込まれることなく、優先順位を見極めて対処することができるしたたかさを持っている。

 マドリーは今シーズン序盤、死に体の様相を呈していた。昨シーズンの低迷を引きずりチームとしての戦い方がバラバラで、選手たちは魂を失ったかのようにピッチを彷徨っていた。もはや巻き返しは難しいと誰もが覚悟した。しかしその不可能をジダンはまたしてもジダン流で可能にした。

 ジダンはこうまで言い切った「戦術は何の効果も生み出さない」。実際、彼がマドリーに施した処方箋は、戦術における思考を最大限にシンプル化することだった。そして指揮官の手腕によって進むべき方向性が定まったチームはかつての競争力を取り戻した。
 
 ただジダンは決して戦術を軽視しているわけではない。昨今フットボールでは誰もがわれ先にと最先端の戦術の発案に躍起になっている。そんななか、ジダンは選手たちを信頼し、各々の個性が発揮できるような健全な雰囲気作りに注力した。戦術の再構築よりも選手たちのメンタル面の回復を優先させた。

 そこにはマドリーのような一線級のタレントが揃うチームにおいては戦術の見直しのために練習で繰り返し動きを確認して選手たちを疲弊させるくらいなら、自主性と積極性を刺激することでチームとしての一体感を醸成させ、全員が同じベクトルの向きで戦える体制を整備したほうが有効であるという指揮官の確たる信念が垣間見えた。
 

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