降格圏から一転、上位争いへ! 好調シャルケには、何が起きているのか?【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2019年10月08日

新指揮官のもと、くすぶっていた選手が覚醒

2ゴールを決めたパーダーボルン戦で、アリットはベンチにいる指揮官に駆け寄っていた。 (C) Getty Images

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 そして、優秀なスタッフの仕事をまとめ上げ、チームに正しい心構えと戦い方を植え付けているのが、今季から指揮を執る監督のデイビット・ワグナーだ。

 記者会見ではユーモアたっぷりに愛嬌のある受け答えをするが、サッカーのことになると誰よりも熱い。試合を大切にし、心に響く言葉で選手の練習や試合への意欲を高めている。勝利したライプツィヒ戦後には「誇りという言葉は、こうした試合のために発明されたものだ」と選手を称えていた。

 そんなワグナーへの選手からの信頼は厚く、昨シーズンは足に重しをつけているかのようだった選手たちが、何かから解き放たれたかのように伸び伸びプレーしている。

 なかでも、アミンヌ・アリットの復活がなによりの驚きだ。昨季は期待されながらもプライベートでの問題が多く、規律面の乱れを理由にトップチームから何度も外され、シーズン後には放出候補筆頭の選手だった。

 そんな彼をワグナーは信頼し、もう一度チャンスを与える決断をした。アリットは指揮官の期待に応えようと、開幕から見違えた姿を見せている。スピードとアイディア豊富なプレーでトップ下の位置からシャルケの攻撃を牽引。公式戦8試合で4ゴール・4アシストとスコアポイントを稼ぎ、得点ランキング4位に食い込んでいる。

 そして、ボランチではポテンシャルの高さが注目されながらも伸び悩んでいたマスカレルが、抜群の存在感を放っている。ポジショニングの良さと競り合いの強さ、そして適切なパスワークで攻守のバランスを統率。「昨シーズンよりもチーム全体的に良好だと思う。プレシーズンは本当にいい感じで過ごすことができた」と自信を口にしている。

 とはいえ、シーズンは始まったばかりだ。まだまだやるべきことは多く、いずれ、チームの状態がうまくいかない時期もくるだろう。スポーツディレクターのヨハン・シュナイダーは「我々は正しい道を歩んでいるし、確かな発展途上にいる。だがそれ以上のことではない。謙虚でいることが大事だ」と襟元を正していた。

 もちろん、ワグナー監督自身もよく理解している。ライプツィヒ戦後には「この時点でヨーロッパを口にする奴がいたら(※ブンデスは上位チームにCL、ELへの参加権が与えられる)、錠剤でも渡してやってくれ」と笑い飛ばしていた。

 今は、一つ一つの試合に集中し、自分たちのクオリティーをどんどん高めていくことが重要だ。シーズンが始まってみないとどうなるか分からない不安定さとお別れするためにも、来季以降にも繋がっていく、確固たるスタイルを見つけ出したい。
 
筆者プロフィール/中野吉之伴(なかのきちのすけ)
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)
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